JIDA東日本ブロックニュース~2026年3月号〜
【2026年3月号目次】
1:笠間ブロックデーについて
2:おすすめ展示会&イベントのご紹介
3:コラム
4:編集後記
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【1:笠間ブロックデーについて】(東日本ブロック 佐野 正 / 堀内 智樹)

JIDA 東日本ブロックデー Vol.2『 茨城県笠間市 チョコッとのぞき見ツアー』
JIDAで最近なにかと話題にのぼる「茨城県笠間市」。 古くからの陶芸の街でありながら、新しい試みが次々と生まれているこの街の「今」を、1日かけて贅沢にのぞき見してみませんか?笠間の「教育・芸術・食・職」を巡る充実のルートです。笠間名物の陶芸、歴史を活かしたカフェ、老舗の酒蔵。笠間の文化にどっぷりと浸かりながら、街の未来を作るフロンティアとの交流も予定しています。デザイナーの視点を刺激するクリエイティブな休日を、ぜひご一緒に! JIDA会員の皆さんに優先的にご案内している本イベント、一次申込〆切は今週金曜日(3/6)です!奮ってご参加ください。
【開催概要】 ■日 時:2026年3月28日(土) 9:45 集合 ■定 員:20名(先着順) ■場 所:茨城県笠間市(JR常磐線 友部駅 集合解散) ■参加費(税込):2,000円(別途レンタルバス代 3,000円~) ※参加人数や移動手段により変動します。 ※現地までの交通費、および昼食代は各自ご負担となります。 ※現在、移動方法など検討中ですが参加人数により集合場所の友部駅よりマイクロバス等を貸し切り巡回する可能性があります。その場合バスのレンタル代3,000~4,000円をご負担いただく可能性がありますので、ご了承ください。 ■申 込:https://jidaeblocday-kasama.peatix.com/view ■申込締切:2026年3月6日(金) 17:00 (一次締め切り)
★ここがポイント!★ 本ツアーのメインイベントとして、大正建築をリノベーションした「大正カフェ」にて、実際に施工を担当された蛭牟田 展衣(ひるむた のぶえ)氏との懇談会を予定しています。現場のストーリーを直接伺える、JIDAならではの貴重な機会です。
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■紙と出会う 開催期間:2026年2月27日(金)~ 2026年6月24日(水) 開館時間:11:00~21:00 入場料:無料 会場:とらや東京ミッドタウン店ギャラリー 公式サイト:https://www.toraya-group.co.jp/shops/shop-13 開催概要: 私たちの暮らしに欠かせない紙。文字を記す以外にも、食生活や住環境、贈答など、日常のあらゆる場面で用いられています。本展示では、身近なものから意外なものまで、さまざまな紙製品のご紹介などを通して、紙の奥深さや魅力を伝えてまいります。実際に紙に触れるコーナーもご用意していますので、見て、触って、ぜひ紙との新たな出会いをお楽しみください。
■こだわりすぎた腕時計展 開催期間:2026年3月14日(土)~ 2026年3月29日(日) 開館時間:11:00~20:00(入場は19:45まで) 休館日:会期中無休 入場料:無料 会場:LIGHT BOX STUDIO 東京都港区南青山5丁目16-7 公式サイト:https://www.seiko-seed.com/powerdesignproject2026/ 開催概要: power design project は、セイコーウオッチのデザイナーが既存の概念にとらわれないデザインの在り方と可能性を、腕時計を通じて提案するプロジェクトです。 2022年に復活してから4回目となる今回、デザイナーたちが取り組んだテーマは、「腕時計への偏愛」の新しい表現です。これまでセイコーは、140年を超える歴史の中で、幅広いデザインで多様な価値観に応えてきました。その経験から、腕時計は、無数の“こだわり=偏愛”が詰め込まれた特別なプロダクトであるとデザイナーたちは考えています。 腕時計を愛するデザインの専門家として、そのプロフェッショナリズムを最大限に発揮。腕時計に込められる独特の要素を抽出し、深く掘り下げることで、新たな魅力を生み出すことに挑戦しました。その結果が形となった、これまでにない個性を放つ7つの腕時計を提案します。 ぜひ、実際に腕時計を手に取っていただき、デザイナーの情熱と、腕時計の新しい可能性を切り拓こうとする想いが込められた「こだわりすぎた腕時計」たちを、開発ストーリーとともにお楽しみください。 |
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【3:コラム】(東日本ブロック 中林 鉄太郎)
【レタスとケーキとインダストリアルデザインと】
「先行きが見えない時代」だと言われて久しい。今後の情勢においても不確実性は高まる一方だ。確かに、日々の暮らしからグローバルな情勢までを見渡しても、それは「変化」というより、本質から作り替えられる「変容」と呼ぶべき事態ばかりに見える。だが待てよ、と思う。程度の差こそあれ、不確実でなかった時期などあっただろうか。20世紀型の工業化社会から21世紀型の知識社会への移行という大きなうねりの中で、デザインの視点は「技術中心」から「人間中心」へと移り変わった。役割もまた、機能や性能より「意味や価値」に重きが置かれるようになり、単なる「モノのデザイン」だけでは解決できない要求に応える必要にも迫られてきた。 社会と並走するインダストリアルデザインの領域を見渡せば、日々のデザインワークは常に不確実で、不安定な足場の上にあった。そう考えれば、今年度もいわば「通常営業」である。我々の仕事はいつだってそうだったのだ。そう腹を括れば、インダストリアルデザインにおける「変わらないこと」の輪郭を、改めて手のひらで確かめられるような気がしてくる。
しかし、モヤモヤしてしまう出来事はいつも不意をついて現れる。思い起こすのは数年前、熊本駅近くのホテルでの朝食だ。安藤忠雄氏の設計でリニューアルされた在来線駅舎の傍らに建つそのホテルは、オープン間もなく、しつらえも小綺麗だった。随所に熊本の自然や歴史をモチーフとしたデザインが施され、フロントのソファには小ぶりなくまモンが腰掛けている。土地の文脈を重んじるコンセプトは、もちろん食事にも反映されていた。天草の海の幸、阿蘇の山の幸。旬を凝縮した和洋ビュッフェを楽しめると聞き、私は混雑前にテーブルに着いた。からし蓮根をはじめ、郷土料理が並ぶ様子は壮観だ。数回に分けて料理を運び、いざ箸をつけようとしたその時、斜め前の席に目が留まった。 母娘の二人旅に見えるそのテーブルには、「レタスだけ」が盛られた皿と、「何種類ものケーキ」がのった皿、ただそれだけが並んでいたのだ。確かにビュッフェには、熊本産のフルーツをふんだんに使ったであろう色とりどりのケーキが並んでいた。全種類を制覇したかったのかもしれない。そんな気持ちに共感もしたが、離れた場所からの観察で分かることなどたかが知れている。私は想像力を逞しくして自問自答したが、結局、釈然としない気分のまま朝食を終えたのだった。
「考える」ことは「選ぶ」ことと同義だ。なぜなら思考とは、用意された選択肢の中から、何らかの理由に従って選び取る行為だからである。そこには意識的か否かを問わず「評価」が介在し、比較による「判断」が下されている。そしてこの判断には、個人の背景にある「文化」も色濃く反映される。あの日、彼女たちがなぜレタスとケーキを選んだのか、その真意に迫ることはできなかった。しかし、彼女たちがその時、最も食べたいものを自らの意思で選び、その時間を満喫していたことだけは疑いようがない。その時、不意に気づいた。あぁ、これはデザインの景色と同じではないか、と。 「デザインは色や形を操作しているが、形作っているのは意味や価値である」という観点に異論はない。インダストリアルデザインの文脈で言えば、人はバケツという物体そのものではなく、それが機能している状態(意味と価値)を消費している。底に穴が開けばそれは不用品と化すし、機種変更で初期化されたスマートフォンを眺める時、我々はそこに自分の所有物としての意味を見失う。だが、だからといって色や形が「おまけ」なわけではない。人は色や形を見て、直感的に「好きか嫌いか」「欲しいか欲しくないか」を判断する。感情こそが人を動かすのだ。そう考えると、あの「レタスとケーキ」もまた、彼女たちの感情に接続し、顧客価値を最大化した究極の選択だったと言える。そう思い至ると、それまでのモヤモヤ もすっと消えていった(後日知ったことだが、熊本は全国有数の冬レタスの産地でもあった)。
インダストリアルデザインの領域において「変わらないこと」の輪郭。それは、疑いようもなく「人々の感情に接続する色と形の総合的な造形」である。1997年に独立し、JIDA会員となって29年。デザインの世界に身を置いてきた自身の歩みを振り返ると、その「色と形」がもたらす効能を伝える伝道者として、自分は役割を全うできていただろうか。干支が一巡した歳となってもなお、そんな自省が頭をもたげる。 レタスの生産者も、ケーキを仕込むパティシエも、そして我々インダストリアルデザイナーも、提供する「色と形」の品質こそが生命線だ。デザインの意味と価値を、色と形で語り継ぐ。結局のところ、何周か回ってデザインを志した原点に戻ってきたような感触とともに、私の2026年は始まった。
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