JIDA東日本ブロックニュース~2025年5月号〜
東日本ブロック 浅香 秋也
最近では、「年末」よりも「年度末」の方が何かと慌ただしい…なんて声もよく聞かれますが、
皆さま3~4月を無事に乗り越え、多少落ち着かれましたでしょうか。新しい環境や変化の多
い時期ではありますが、一息つきながら、1年で1番心地よいと思われるこの季節を楽しん
でください。今月もどうぞよろしくお願いいたします。
【25年5月号目次】
1:会員書籍紹介
2:展示会などの告知
3:コラム
4:編集後記
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1:会員書籍紹介
『シェーカー教徒の思想とデザイン ——祈りの中の家具と建築』
石川義宗 思文閣出版 2025年3月 定価7,700円(税込)
本書は、モダンデザインの起源に位置付けられているシェーカー教徒の家具や建築を振り
返るものです。阿部公正(監修)『世界デザイン史』などの冒頭で紹介されており、ご存知の
方も多いと思います。装飾のないシンプルなデザインはアメリカにおける機能主義の文脈で
語られることもしばしばです。しかし、当のシェーカー教徒たちは機能主義としてデザインし
たわけではありません。また、現在のデザイン史研究の潮流は当事者の観点を重んじるも
のにもなっています。そこで、本書は彼らの教義書を手がかりにシェーカー自身がどのよう
にしてシンプルな家具を生み出したのか探究しています。そこには、インダストリアルデザイ
ンという概念が生まれる以前の素朴で奥深いイメージの世界がありました。
思文閣出版(アマゾンなどでもお求めできます)
https://www.shibunkaku.co.jp/publishing/list/9784784220939/
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2:展示会などの告知
「デザインあ展neo」
2025年4月18日(金)~9月23日(火)
https://exhibition-ah-neo.jp/
「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」
2025年4月5日(土)~6月15日(日)
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202504_tapio.html
「DESIGN MUSEUM JAPAN展2025~集めてつなごう 日本のデザイン~」
2025年5月15日(木)~5月25日(日)
https://design-museum-japan.jp/
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
3:コラム(担当:小幡 真也)
JIDAの皆さん、Buongiorno!(ボンジョルノ)。
今日から5月です。私は今月55歳にになります。55の暮らしって、デザインを学び始めた学
生のときには、全く想像がつかない世界でした。いざこの歳になってもやはり近況はなかな
か想像がつかない出来事が起きます。皆さんの中にも4月前後で職場が変わったり、住む
場所が変わったり、または家族が進学や転居や様々な環境変化が起きたことと思います。
でも、こんなことが起きるんだぁと何事も日々楽しみながら暮らせたら良いと思います。
さて、私は3月にスペイン・マドリッドへ行き、4月はじめからドイツ、イタリアと移動し、現在
イタリアのヴェネチアに5月中頃までの予定で暮らしています。このような海外での仕事が
連発することは全く予想外で、依頼があれば様々なことに携わってきましたが、この長旅で
は戸惑いや疲労もあるけどやはり経験する価値の方が高い。ということで、水の都、ヴェネ
チアのど真ん中で暮らして知ること、感じたことを寄稿させていただきます。
1)建物が財産。ヴェネチア本島では、街並みの保全のためにレンガを多用しています。
しかし、湿度が高いことや海水が徐々に建物の基礎から毛細管現象のように染み上がる
ことによりレンガが内部から崩れていくそうです(写真)。よく見るとレンガの修復で色が異
なっていたり、下部の方が崩壊しています。このようなつぎはぎ感や朽ちていく姿が独特の
景色をつくっています。一方、ドイツ・デュッセルドルフの旧市街地にもレンガの建造物は多
くあるのですが、二つの街の印象は全く異なります。街の景色は立地や気候が大きく影響
し、建造物の影響が強いことを実感します。今回現代アート展で借りた展示場の1つは
1500年頃に建てられたPallazo Bollaniという場所。もう一つは1700年代に建てられたヴェ
ネチア国立考古学博物館の一部。また、今住んでいるCampo San Boldoという建物は
1088年に建ち1826年までに何度か修復された元教会です(写真は建物と周囲の様子)。
どの建物もレンガに触ると、ボロっ剥がれるよう状況ですが家主が大事に保存しています。
2)ヴェネチア語とイタリア語の違いがある。これは日本でいうと標準語と京都弁のような関
係らしいです。やはり古都は言葉も大切な文化のようで、発音の最後や語尾がすっと消え
るようです。京都弁もそんな柔らかい印象があります。滞在中、サンマルコ広場の近くのレ
ストランAl Chiantiには仕事中の食堂のように通っています。今回仕事で一緒の棟梁の
奥様の実家ということでヴェネチア料理を制覇するべく食の提供をいただいています。
先ほどのヴェネチア語を引き継ぐのと同じく、家業のレストランに娘さんや親せきがアルバイ
トで働くなど、家系・家業を大切にした暮らしがヴェネチアに多くあるそうです。観光では表
面的にしかわからないことも、地元の方々との交流から深く理解できるのも良い体験です。
3)少しカタイ話。システム化したり、見える化したりすることにより、価値を再定義すること
の大切さについて。例えば文化の活用について。京都やヴェネチアは地元に芸ごと文化や
古来の建物や仏像や芸術彫刻が根付いています。何気なく触った柱や展示物が何世紀も
前のものだったりすることが当たりまえ。その反面、今はかえがたい財産として利用されて
いますけど、少し昔のイタリアでは、ローマ文化などが身近過ぎるため、文化や芸術を大切
にしようとは、あえて言わない状況が長くあったそうです。ご存じのように最近、日本では地
方創生として、日本の各地域をはじめ文化の見直し再定義が進むようになってきました。
この各地の活動が価値の根付くまで完遂してほしいと思います。再定義活動の最たるもの
は、歴史が浅く文化の層が薄いアメリカの活動です。世界をリサーチして、自国にはない文
化を再定義すべく美術館や批評家を立てて世界中の物事に批評や言葉をつけて価値を高
めようと努力しています。強めに表現すると、まるで自分のものであるかのようにしてしまう。
こういう活動は、MoMAの美術品収蔵方針や現在アメリカのIT産業が強みをもつプラット
フォーム産業などがあります。
このほかの事例としては、イベントの活用です。世界中の人の移動を促したり気持ちを虜に
する力がイベントにはあります。ヴェネチアではビエンナーレとして毎年アート、建築、映画
などのクリエイターを世界から招集するシステムを確立しています。日本も1950年代から参
加しています。デザイン界では、ミラノで毎年4月に行われる祭典としてミラノサローネを実
施して人を集めています。このような世界的なイベント活動には規模の違いはあるけれど
も、情報発信、寄付活動や団体との交流方法などのノウハウが詰まっています。
JIDAでは、毎年ミュージアムセレクションを行ったり、ISDWをおこなったり、検定事業をした
り、各種イベントをほぼ定期的に実施しています。年度行事として、「あっ、もうそろそろ〇〇
の時期だね」なんて想起させるものがあります。身近な例では地域のお祭りや子供の運動
会を予期できるかのように、定期イベントの大切さをあらためて感じました。定期活動にお
いて、前年を参考に、毎年少しずつアップデートすることでJIDAの活動の強化と定着化がす
すむと思います。
最後に、話を戻します。先日のJIDAの役員選挙において、新たな活動に向けて各種要職
に選出された方々も多く、また多くの新しい会員が入会されると思います。公益法人として
不慣れな活動があったり、献身さを期待されたり、いろいろな状況が出てくると思います。
でも、できるだけ早く、気持ちと環境を入れ替え、一緒にJIDAを盛り上げていただけると嬉
しいです。
チャオ!(ciao)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
4:編集後記
先日10数年ぶりに中国広州の展示会に伺いました。街も展示会場も展示製品も、以前と
だいぶ変わった印象で興味深く、大変勉強にもなった視察となりました。うまく仕事に活か
せるとよいのですが。
またせっかくなので観光ついでに少し散策したのですが、その際、あまり街に野良猫がい
ないものだなと思っていたところ偶然見つけ、面白がって写真を撮ってみたところなんと
「オッドアイ」の猫!肉眼では分からなかったのですがスマホカメラで拡大して初めて気が
つきました。画像では見たことがあったのですが、実物(スマホ越しで気がついたのですが、)
は初めてで、何かいいことでもあるのかなと期待しておりましたが今のところ目立った幸運
は無いみたいです。それも含め楽しい訪中経験でした。食事もよかったです。
■お問い合わせは、JIDA事務局まで
公益社団法人 日本インダストリアルデザイン協会
Japan Industrial Design Association/JIDA
〒106-0032 東京都港区六本木5-17-1 AXISビル4F
Phone : 03-3587-6391 Facsimile : 03-3587-6393
E-mail : jidasec@jida.or.jp
JIDA東日本ブロックE-mail : jida-east@nifty.com
URL : https://www.jida.or.jp/
配信日時: 2025/ 05/ 01