JIDA東日本ブロックニュース~2026年1月号〜
昨日配信しましたブロックニュースにつきまして、コラム画像の説明キャプションに一部誤りがありましたので訂正しまして再配信致します。失礼致しました。
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【2026年1月号目次】
1:年頭のご挨拶
2:おすすめ展示会&イベントのご紹介
3:コラム
4:編集後記
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【1:年頭のご挨拶】(東日本ブロック 佐野 正)
二極化の時代に、デザインの「結節点」を求めて
新年あけましておめでとうございます。
約10年ぶりに東日本ブロック長を務めさせていただいている佐野正です。
いま、私たちは大きな二極化の狭間に立たされています。 デジタルとアナログ、人工物と自然物、効率を求めるAIと人間特有の自然知能、そして平和と紛争。このような状況がますます鮮明になる時代において、デザイナーとしてどの様な立ち位置でモノづくりに関わるのか。今、その姿勢が問われています。
ツールや環境がどれほど変化しようとも、私たちの目指す本質は変わりません。それは、使い方、システム、製造、再生、素材といったあらゆる側面から「クオリティ」を研ぎ澄ますこと。そして、その志を共有し、高め合う場こそがJIDAであると考えています。
この「クオリティ」と「共有」を体現する2つの活動をご紹介させてください。
◎ 1月23日(金) 開催:JIDA賀詞交歓会
今年の特別記念講演には、漆芸家で人間国宝の室瀬和美氏をお迎えします。JIDA監事・長谷高史氏との対談を通じ、究極のクオリティを追求する「デザインとものづくり」の本質に迫ります。インダストリアルデザインの枠を超え、究極のモノづくりのなかに未来へのヒントを探る貴重な機会です。
◎新プロジェクト:JIDA NODE始動
「リアルに集まり、若手が主役となれる場を」という声に応え、新たなコミュニティ“JIDA NODE”をテストスタートします。多様な知見や発信が交差する“結節点”として、まずは東日本ブロックから展開予定です。
リアルな交流の場を再構築し、運営の立ち上げから関わっていただけるメンバーを募集中です。ご興味のある方は、ぜひ私までご連絡ください。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
賀詞交歓会の会場で、皆様とお会いできることを楽しみにしております。
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【2:おすすめ展示会&イベントのご紹介】(東日本ブロック 大喜多一範)
■JIDA2026年賀詞交歓会

日時:2026年1月23日(金)17:00~20:00 会場:AXISギャラリー(東京都港区六本木5-17-1 AXISビル4F) 定員:100名(先着順) 会費(税込):JIDA会員 3,000円 / 一般4,000円 / 学生 / 1,000円 / JIDA学生会員 無料 申込:https://jida-newyear-party2026.peatix.com/view
■織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ 開催期間:2025年12月2日(火)~2026年1月18日(日) 開館時間:10:00~19:00(最終入場は18:30まで) 休館日:2025年12月9日(火)、2026年1月1日(木・祝) 入場料:一般¥2,300、大学・高校生¥1,500、中学・小学生¥700、未就学児 無料 会場:ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ9F) 東京都渋谷区渋谷2-21-1 公式サイト:https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/25_wegner/
■47えんぎもの展 開催期間:2025年11月14日(金)~2026年3月15日(日) 開館時間:12:00~20:00(最終入館 19:30) 休館日:年末年始 ※12/31(水)は18:00までの時短営業、1/1(木)~1/2(金)休業。 入場料:ドネーション形式(会場受付) 会場:d47 MUSEUM(東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ8F) 公式サイト:https://www.d-department.com/item/47ENGIMONO.html
■アルフレッド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての人たち 開催期間:2026年1月21日(水)~2026年3月29日(日) 開館時間:11:00~19:00(入場は閉館の30分前まで) 休館日:月曜日(2/23は開館)、月曜祝休日の翌火曜日(2/24)、2/28(日・全館休館日) 入場料:一般1,600円/大・高生1,000円/中学生以下および障害者手帳等をお持ちの方と付添1名は無料(同時開催「寺田コレクションハイライト 後期|収蔵品展 085 寺田コレクションより」、「project N 101 岩崎奏波」の入場料を含む) 会場:東京オペラシティ アートギャラリー ギャラリー1、2 (東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー3F) 会場URL:https://www.operacity.jp/ag/ 公式サイト:https://www.operacity.jp/ag/exh294/
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【3:コラム】(中部ブロック 井上雅弘)
イタリアの工房が教えてくれたこと ——日本のものづくりと感性への小さな提言
企業のデザイン部門で長く活動してきた。日本のものづくりが世界のトップクラスにあった時代も、韓国や中国の急伸によってその座が揺らぎはじめた時代も、そのただ中に身を置いてきた。海外勢に追い上げられる過程で、しばしば「何が悪かったのか」「どうすれば再び強くなれるか」という議論に多くの時間が費やされた。しかし本当に大切なのは過去を検証することだけではなく、日本のものづくり、ひいては産業全体がこれから世界の中でどのように存在感を示していくのかという未来のビジョンである。
現在籍を置く大学での教育も、まさにその未来を見据えた営みだ。日本のデザインや製造業が抱える課題をどう解きほぐし、どのように活性化するか。そして、韓国・中国・台湾といった周辺国が急速に力を伸ばす中で、日本独自のオリジナリティとは何かを問い続ける姿勢が求められる。グローバルな視点を持ちながらも、自国の足元を見つめる。その両立こそ、教える立場にある者がまず備えるべき態度なのだろう。
では、日本のものづくりの特質とは何か。鍵となるのは「ディテールへの配慮」や「おもてなしの心」といった、データだけでは捉えきれない感性の領域である。設計図の正解を追うだけでは到達できない、触れたときの心地よさ、使うほどに生まれる愛着、その微細な差異にこそ、日本のものづくりは価値を見いだしてきた。ゆえにデザイナーには、現場に足を運び、作り手と同じ空気を吸い、使い手が見ている世界を身体で理解する姿勢が不可欠となる。
その重要性を思い起こさせる出来事がある。もうかなり昔のことになるが、ミラノサローネ視察の折に訪れたイタリアの自転車メーカー“De Rosa”での体験だ。De Rosa は高級ロードバイクの名門で、当時も一台数十万円から三百万円近いモデルが販売されていた。サイクルスポーツの象徴のような存在であり、その開発プロセスについても当然トップレーサーとの綿密な協業を通じて生み出されるものと考えていた。
ところが工房に足を踏み入れた瞬間、その想像は心地よく裏切られた。規模こそ大きくはないが、驚くほど丁寧な手仕事が静かに息づいていた。そして彼らが何より強調したのは「自分たち自身の感性」である。創業者ウーゴ・デローザの息子たちは、自らの足を指しながら「この足の感覚がすべての基準になる」と語った。彼らは製造者であると同時に熱心なサイクリストであり、乗り手としての身体感覚を深く理解していた。つまり、自らの“感性を信じ抜くデザイナー”でもあった。
年間フレーム生産は約7,500本。そのうち4割は固定客で、「誰が使うのか」を具体的に想定した上でつくられる。他の客にしても、De Rosa が創業以来守り続けてきた“感性的価値”に惚れ込み、ブランドの哲学を求めて訪れる。彼らが語った「良いものをつくれば必ず売れる。何が良いかは他の誰かに聞く必要などなく、自分たちが一番知っている」という言葉は、傲慢ではなく、長い経験と鍛えられた感性に裏打ちされた静かな確信だった。 興味深いことに、その哲学は今も De Rosa の中心に息づいている。三代目のニコラ・デローザがデザイン部門を担い、伝統的なスチールフレームを守りながら、カーボンモデルの刷新やブランドロゴの再設計、外部クリエイターとの協働など多様な挑戦が進む。しかし根底にある“感性を信じる”哲学は揺らがない。むしろ新しい試みは、その核を守るための外殻を時代に合わせて更新しているように見える。市場データに過度に依存せず、自らの美意識を基準に判断する。変えるべきものと変えてはならないものの境界線を内部の哲学で定める。この“芯の強さ”こそ、老舗が老舗たりえる理由である。
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