2025年度卒業制作展訪問
公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会
中部ブロック・次世代事業担当
委員長 岡田 心
◆2025年度【卒業制作展訪問】JIDA中部ブロックデザイン賞のご紹介◆
中部ブロック・次世代事業委員会では、本年度もデザイン系大学卒業制作訪問(卒展訪問)を開催し、訪問先毎に優秀な作品を選定し表彰しました。今後の開催予定はこちらを御覧ください。
本年度のJIDA中部ブロックデザイン賞は以下の方々です。
2025年度JIDA中部ブロックデザイン賞
■大同大学
2025年2月23日(祝・月)会場:ナディアパーク2Fアトリウム
総評
今回の卒業制作展では、形や構造そのものへの挑戦が随所に見られました。卒業制作という時間的制約の中で、理想を追求しきれた作品もあれば、途中で現実的な判断を迫られた作品もあったでしょう。しかし、理想の形を思い描き、試行錯誤しながら挑戦したプロセスそのものに大きな価値があります。
特に印象的だったのは、学生たちが新しい構造や3Dプリンターならではの造形を、きわめて自然体で扱っていたことです。「3Dプリンターを使うこと」が目的なのではなく、「自分が実現したい形」に最も適した方法として、新しい工法や材料を選び取っている。その姿勢がとても健全で、頼もしく感じられました。
(文責:堀田俊則)
最優秀賞:杉 明香里「ひらがなび」
評価コメント:
立体化されたひらがなの溝に沿って書き順どおりに球が転がり、遊びの中に学びを組み込んだ知育玩具です。
平面で表すものである文字を、書き順という時間軸で玉を転がす道として立体化している発想力と、50音すべてを3Dデータとして作りあげたことを評価しました。それぞれの形を大きなサイズに展開し、子どもが滑り台のように体を使って遊べるスケールにしても面白いのではないか——そうした発展形まで想像させる力を持っています。色彩については、子ども向けとして透明やカラフルな展開も考えられますが、あえて黒を選んだことで墨や硯を想起させ、書道の文化的背景とつながる静かな強さが生まれています。(文責:堀田俊則)
優秀賞:服部 福丸「株式会社 シュクジツ」
評価コメント:
祝日を楽しく学ぶためのキャラクターを食品のおまけシールとしてまとめた企画です。
キャラクターそのものの造形力が強く、特に子どもたちが「好き」「集めたい」と思わせる力を持っています。「祝日出勤」など少しブラックなユーモアも含めて、可愛らしいキャラクターでまとめているバランスもちょうど良く、歴史的・政治的・文化的背景のある各祝日の由来を楽しく知ることができます。細部の設定やグラフィック処理まで丁寧に作り込まれており、統一された世界観とキャラクターデザインでまとめ上げた企画力が抜きん出ていました。(文責:堀田俊則)
特別賞:神田 直季「すいろう」
評価コメント:
水の流れがもたらす心地よさを、生活空間の中で体験できるプロダクトとして提示した作品です。
水が落ちる空間を多段にして、それぞれに異なる形状を与え、水の動きという自然現象を「見せる」ための編集がなされており、その美しさが評価されました。複雑で有機的な水路の構造は、従来工法では難しい形状であり、3Dプリンターの技術と造形が活かされています。実際に水を流し、動作する状態まで作り上げたこともすばらしく、流れる音という聴覚的要素まで含めて居心地の良い空間を作り出すことができています。(文責:堀田俊則)
■静岡文化芸術大学
2025年2月18日(水)会場:静岡文化芸術大学 同キャンパス
総評
浜松駅から徒歩15分程度という利便性と、素晴らしい環境にある静岡文化芸術大学には2022年度から毎年訪問させて頂いており、公立大学らしい質の高い提案が毎回の楽しみになっています。今回は4名の学生がこのイベントに参加され、モビリティー、家電、伝統工芸、知育玩具など幅広いテーマの研究成果をプレゼンテーションしてもらいました。
(文責:後藤規文)
優秀賞:伊藤 愛「Agloop ―学校に来訪する教育用農業体験モビリティ」
評価コメント:
「農園に行けないなら、農園が来たらいい」というわかりやすいコピーが印象的である。モビリティーを人の移動ではなく、イベント事の移動にもちいるという視点はキッチンカーなどが代表的で目新しいものではないが、土地そのものを運ぶという意味ではなかなか斬新な提案である。モビリティー内には、作物の特性ごとに考えられたプランターが設置されており、動くビニールハウスのようなデザインはユーモラスな表情を持っており好感が持てる。システムとしてもよく考えられている点が評価された。この移動農園は、都市部で生活する子供たちに週一の体験授業が主目的とされた心優しい提案であるが、兼業農家である当方から見ると農業としての採算性が乏しいことが少し残念であった。(文責:後藤規文)
特別賞:伊藤 颯 「あじのかたち ―食べた食材の味を、立体パーツでカタチにして表す食育プロダクト」
評価コメント:
幼児たちの持つ未開拓で敏感な味覚の印象を親たちと共有する方法として、味を立体で表現するという目からウロコ的な提案であった。確かに語彙力が発展途上の幼児にとって、カタチのほうが表現しやすいかもしれない。また、逆に大人は味覚に鈍感になっていることを気が付かせることも面白い。ただし、カードゲームという着地点と、カタチに色の要素が加わっていることが既に体験したものを想像させる点は改良の余地があると感じたが、研究としてはとても興味深く、次の展開を期待したくなる点で特別賞とした。(文責:後藤規文)
■名古屋デザインアカデミー
2025年2月17日(火)会場:名古屋デザインアカデミー
総評
選抜5名のプレゼンを聞かせていただきました。初めて訪れた校舎は、コンパクトなフロアが積み重なったこの立地ならではのキャンパス。2年間で基礎から実践を含めた課題制作、入学半年後から始まる就活など、短い期間の中で大変濃密な時間を過ごしたことと思います。大須も近く、フィギュアやマンガ、イラストを学ぶ学生も多いこの学舎でしか得られなかったことも、きっと多くあったんだろうと散見しました。これから社会に出て様々な経験をし、より多様な視点、自分にしかできない表現を見つけていって欲しいと思います。
(文責:則竹由香)
優秀賞:河木琴葉「ツミクレ」
評価コメント:
誰しも幼いころに手にした積み木、スタンプ、クレヨンを一つのプロダクトに落とし込み、成長段階に応じて機能を変化させていく提案。最初は十字形の4色クレヨンを積み上げて遊び、次の段階では先端のパーツを外すと曲面に4種のスタンプが仕込まれており、弱い力でも曲面に合わせて動かすとスタンプが押せるようになっている。最終的に自分で絵を描ける年齢になると、十字形をバラして1色ずつのクレヨンとして長く使っていく。自分自身一番近くで子どもを育てた経験者としては、小さな赤ちゃんがひとつづつ習得していく姿は本当に愛おしく、出来なくて泣いてしまう姿もまた可愛い。が、それが毎日毎時間「常に」となると少し話が違ってくる。小さなパーツはやはり誤飲の危険性があるため目を離せない、きっと投げたりすることもあるだろう。親目線としては収納できるボックスや小さな手が使った痕跡を残しておける工夫があっても良かったかもしれない。ネフ社の美しい積み木のような遊びの自由さと安全性、普遍的なデザインは一度手に触れて欲しい。
生まれたての赤ちゃんが自分の手をじっと見つめ、口に入れて自分の五感で自分の手を認識していくように、子どもは大人の意図とは別に勝手に無邪気に新しい使い方をしてくれるかもしれない。(文責:則竹由香)
■名古屋造形大学
2025年2月17日(火)会場:名古屋造形大学 同キャンパス
総評
名古屋造形大学キャンパス内にて卒業制作展を訪問、13名の学生作品の展示とプレゼンテーションを拝見しました。学生の提案説明と私たちの質問、その応答は皆個性豊かで楽しく、2時間余りあっと言う間でした。自然・こどもの行為・伝統文化への「着目」、ありたい社会や暮しを実現するための方法を導く、その逆で技術や構造や特性を発見してその要素を生かして「発想」する人、同大学の特色でもある「造形の美しさ」をどことん探求する人等々、卒展は人それぞれデザイン提案までの思考・方法は異なる分大いに参考になります。自身の制作で余裕はなかったでしょうから、この機会に他者の作品を観察してより幅広い思考を持てるデザイナーであって欲しいと期待します。
(文責:伊奈史朗)
最優秀賞:岡部栞李「刀の解剖展」
評価コメント:
日本刀を刀身・鍔・拵え(鞘・柄)と各々を分解し、構造や製作技術や工夫などを知るため可能なかぎり実物に倣って製作され、鞘の漆塗り・鞘の装身具の1つ鮫皮を使用するなど緻密かつ丁寧な取り組み姿勢を観ることができた。この実体験の過程を表現された作品は観る人を一層感動させる素晴らしい展(プレゼンテーション)であると評価しました。当展のプロデュースや製作過程から学んだ意図・技術は今後のデザイン活動に役立つものと期待しています。 (文責:伊奈史朗)
優秀賞:藤原未来「まるり」
評価コメント:
幼児は食事中に遊んでしまい食事がなかなか進まず終わらない!と、子育て世代共通の悩みを解決する作品。それなら一層のこと料理やお菓子を模した「食」のおもちゃで遊ばせ、その気分で食べてもらう方法に着目。器のお菓子が動いたり見え隠れする中身など、仕掛けの工夫や全体の形・配色から、幼児が夢中で遊び食事する様子を想像でき共感できる作品であること、そして完成度の高さを評価しました。 (文責:伊奈史朗)
優秀賞:牛丸紗雪「Sree」
評価コメント:
生まれ育った安曇野の自然や風景に魅了した感性を花器に映した作品。白色地に淡い水色の釉薬を頂点からゆっくりと流し定着させ、陽の当たる面から空の青さが輝いて見えるそんな情景を花器に込めた工夫の他、一つひとつ丁寧に取り組まれた造形に美しさを感じ、その完成度は評価に値します。(文責:伊奈史朗)
特別賞:内田悠太「ikusou」
評価コメント:
3Dプリンターの仕組み・メリット・特性を調査・研究し得た要素を生かし、デザインの可能性を追求した作品提案で、デメリットと思える特性を特長あるデザインへ変換した作品(照明器具やスピーカーボックスなど)を観て、シーズ(種)からニーズやこんなモノやコトができる可能性を導く発想方法の良い事例提案であると評価しました。 (文責:伊奈史朗)
■名古屋芸術大学
2025年2月14日(土)会場:名古屋芸術大学 西キャンパス
総評
名古屋芸術大学は東海地区の4年制の芸術大学では珍しいカーデザインコースを持ち、今回の選抜者も半分がカーデザイン…列車のインテリアの作品を含めると過半数がモビリティーに関連する提案となり、自動車メーカー出身の私にとっても自分の若い頃を見ている様な…懐かしくも楽しいひと時だった。しかし、その表現はCGや生成系AIによる動画などを駆使した…私たちの時代とは比べものにならないリアルなプレゼンテーションで時代の流れを感じさせる。もちろん、それ以外の作品もアウトプットの物量、クオリティー、フィールドを越えた幅の広さ…どれを取っても見応えのある作品が並ぶ…賞を決めるには悩み多き、レベルの高い展示となった。
「モノ」から「コト」と言われ久しく、「所有の価値」から「体験の価値」に注目する作品も増えた。プロダクトデザインは「モノ」を扱う世界のため、どうしても「モノ軸」で考える傾向が強い。機能、使い勝手、価格、見た目、安全性…など「モノ」に対する思考に縛られがちだ。しかしながら、贅沢を言わなければ既存の「モノ」で充分に便利で快適で豊かな生活を送ることが可能であり、SDGsさえ企業のイメージ戦略や商品を選ぶ基準として市場原理に取り込まれている。サスティナブルと言いながら、新しい「モノ」を作り続けなければ生きていけない矛盾も現実だ。「体験の価値」が重視されるのは、「モノ」だけでは差異化を図ることができない時代に生きているからで、「モノ」から「コト」の本質は、「モノ離れ」では無く、そのデザインに「豊かさ」があるかどうかが問われていることだと思われる。プロダクトデザインは「モノ」を通して機能的な問題解決を進める実務である一方で、デザイナーが自身の視点や考え方、ライフスタイルを世に問う仕事でもある。そして「文脈」とも言うべき「今の時代(想定する未来)における必然性」をどう捉えているかを説得する手段でもある。今回受賞された3名も、機能性だけでは無い魅力を独自の視点で拡張してくれた。
(文責:金澤秀晃)
最優秀賞:濱口奈々「立体家紋 ―生活に寄り添う家紋の在り方」
評価コメント:
家紋のルーツは平安時代に遡り、確認されているだけでも8,000を越えるバリエーションがあるらしい。日本特有の伝統的な「家のロゴマーク」だが、その表現は西洋の紋章とは異なり、単色で表されるストイックさと高度に洗練されたデフォルメや省略により図案化された高度なグラフィックといえる。作者の視点と提案は、誰もが持ちながら現代の暮らしの中では特別な存在となっている「家紋」を日常生活の中に再定義することで、日本人が生来持つ高い意匠的感覚を再確認させてくれた。今回、立体化され提示された実例はどれも美しくユニークなアイデアだが、「自分の家の家紋は何だろう?」…から始まり、それはどんなプロダクトに展開できるか…といった発展性やイメージの広がりを感じさせてくれると同時に、自身のアイデンティティーをユニークな切り口で改めて意識してみる「問い」を投げかけてくれた点が素晴らしい作品だった。アイデア展開でトライした数多くの試行錯誤には3Dプリンターなども駆使され、伝統的な文様がデジタルな道具で蘇り、新たに命を吹き込まれている様にも見え、(家紋について)眠っていた私たち自身に気付きを与えてくれた点も興味深かった。(文責:金澤秀晃)
最優秀賞:鈴木美保 「交植座」
評価コメント:
椅子には、幾つかの「typology」があると感じる。座面、脚を基本に、背もたれや肘掛け、ステップなどをどう関連付けるかによって、その形状はおおよそ類型的なカテゴリーに分類することが可能だと思われる。作品は、この枠組みから「はみ出そう」とする様な自由さを模索している点で好感を持てた。座る機能を実現する以上、人間工学的な配置が下敷きになることは必然だが、そこに新たな要素…今回の作品では「花」が加わることで、倉俣史朗の「Miss Blanche」の如く、椅子は機能的なものから一気にコンセプチャルな存在に変わることを見せてくれた。講評の中では「花は無くても良いのでは?」とのコメントも出たが、作者にとっては「出発点」であり、譲れない要素だったようだ。最終的には背もたれの頂上に花を生けるスペースを持つ提案となったが、普通の姿勢で座る時には折角の花は視界に入らないのは残念だった。木の枝か鹿の角を連想させる自由でユニークなカタチなだけに、座る機能以外はもっと自由でも良かった。強度的な課題や構造的な問題もあると思うが、太さの強弱や造形のリズム、枝振りのバリエーションはもちろん、「花と共存する」という時間や体験を最大限に解釈してみると更に面白かった。「視界に入る」「手に触れる」「香る」「囲まれる」「季節毎に変わる」…或いは「ここに座って何をする?」…座ること以外の周辺にあることを徹底的に洗い出してみることが作品の幅を更に拡げたかも知れない。人が自由に座ることで様々なシルエットが完成する発想は面白かった。(文責:金澤秀晃)
優秀賞:隈元康生「O.C.P TOROID POLICE SENTINEL」
評価コメント:
プロダクトデザイナーの仕事の広がりは、こういったエンターテインメントの世界にも見ることができる。将来を予測し、市場を読み、ニーズを考え、企画を表現する…まさにプロダクトデザイナーが日常的に仕事として実行している得意のプロセスだ。未来をファンタジーでは無く「工業デザインの延長」として捉え、世界観の設計から行うSF映画に於いては、そこに登場するプロップやモビリティーは、デザイナーにとっては得意分野であり、腕の見せ所とも言える。作品では「ロボコップ」の世界観を意識したそうだが、表現のトーン&マナーとしては「ブレードランナー」の香りが強く、技術と退廃が同居する街並みや、ハイテク・ローライフな生活感などの世界観が同映画を彷彿させた。卒制では世界観の設定まで自由にできるなら、「人間が作り上げた未来とは何か」という…ヘビーかもしれないが、借り物では無い作者が考える「今の時代がもたらす未来」について語ってみても面白いと感じた。あの映画を機にシド・ミードが「ビジュアル・フューチャリスト」という肩書きを認知させ、アメリカのアートセンターカレッジでは、「エンターテイメント・デザイン」というコースで映画産業を支える人材育成をしていると聞く。日本でもこういった分野での活躍にもフィールドが広がって欲しい。(文責:金澤秀晃)
■名古屋学芸大学
2025年1月17日(土)会場:愛知県美術館ギャラリー展示室
総評
愛知県美術館ギャラリー展示室にて開催された名古屋学芸大学プロダクト専攻の卒業制作展を訪問し、8名の学生による作品展示およびプレゼンテーションを拝見した。いずれの提案も、学生自身の経験や体験を出発点とし、身近な違和感や問題意識を丁寧に掘り下げたうえで、具体的なかたちへと落とし込まれていた点が印象的であった。
デザイナーに求められるのは、社会や他者の課題を単なる「外部の問題」として扱うのではなく、自分自身の問題として引き受け、ものづくりへと昇華させていく姿勢である。さらに言えば、課題解決にとどまらず、そこから新たな価値を創出できるかどうかが重要となる。今回の展示では、その点を意識しながら試行錯誤を重ねた学生たちの真摯な取り組みが随所に感じられた。
なかでも、自らの強いこだわりや実感を起点に、新しい価値の創造へと結実させた以下の3作品が、最優秀賞および優秀賞として選出された。
(文責:井上雅弘)
最優秀賞:西川友梨 「人木人 ― ふたりとき」
評価コメント:
高さ約30センチほどの木の形をした立体を中心に、磁石を内包した葉の形の木片を一枚ずつ重ね、木に葉を茂らせていく作品。二人が向き合い、葉を重ねていく行為を分かち合うことで、自然と会話のきっかけが生まれ、静かで穏やかなコミュニケーションへとつながっていく仕掛けとなっている。
施設で暮らす祖母を見舞う体験、そして自身が他の施設でケアに関わった経験から得た問題意識を出発点に、「言葉に頼らない関係性の構築」というテーマを、極めてシンプルかつ象徴的な行為へと落とし込んだ点が高く評価された。素材の扱いも丁寧で、行為そのものが関係性を育む媒体となっている点に、プロダクトデザインならではの可能性が感じられる提案であった。(文責:井上雅弘)
優秀賞:加藤昴士 「装走騎士ダービリオン」
評価コメント:
競馬という文化を、子どもにとっても身近で楽しい存在にすることを目指した提案。腕に装着する端末には蹄をモチーフにしたピースが取り付けられ、自分と“縁のある”騎手や馬を認識できる仕組みとなっている。また、鞭をイメージした端末や、腕に装着したピースのスクリーン上で展開されるレース表示など、競馬にまつわる所作や要素が巧みに取り入れられている。
正義のヒーローという子どもに親しみやすいイメージと重ね合わせることで、競馬を単なる大人の娯楽ではなく、憧れや物語性を伴った体験として再構築している点が秀逸である。競馬に対する作者自身の強い思いが随所に感じられると同時に、細部まで丁寧に作り込まれた造形や部品から、高いものづくりの技術力もうかがえた。(文責:井上雅弘)
優秀賞:久野日楠 「LiikeLiike」
評価コメント:
人の感性や身体感覚に働きかけることをテーマにした一連の提案。毛布を膝にかけるだけで、なぜか温かさや安心感を覚える――その日常的で不思議な感覚に着目し、その“謎”を丁寧にひも解いている。実は毛布にはごくわずかなウエイトが仕込まれており、その重さが身体感覚に作用することで、心地よさや落ち着きが生まれていることを、プロダクトとして可視化・体感化した提案である。
「太ももの上に物を置くと落ち着く」という自身の体験を丁寧に振り返り、そこから感覚的価値を抽出し、新しいプロダクトの可能性へとつなげた点が評価された。目に見えにくい感情や感覚を、具体的なかたちとして提示しようとする姿勢は、今後のプロダクトデザインにおける重要な視点を示していると言える。
(文責:井上雅弘)
主催:(公社)日本インダストリアルデザイン協会・中部ブロック
協力:セントラル画材株式会社