JIDA

TYUBU BLOC 中部ブロック

2025年度卒業制作展訪問

 

公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会
中部ブロック・次世代事業担当
委員長 岡田 心

◆2025年度【卒業制作展訪問】JIDA中部ブロックデザイン賞のご紹介◆

中部ブロック・次世代事業委員会では、本年度もデザイン系大学卒業制作訪問(卒展訪問)を開催し、訪問先毎に優秀な作品を選定し表彰しました。今後の開催予定はこちらを御覧ください。

本年度のJIDA中部ブロックデザイン賞は以下の方々です。

2025年度JIDA中部ブロックデザイン賞


 

■名古屋学芸大学

 2025年1月17日(土)会場:愛知県美術館ギャラリー展示室

総評

愛知県美術館ギャラリー展示室にて開催された名古屋芸術大学プロダクト専攻の卒業制作展を訪問し、8名の学生による作品展示およびプレゼンテーションを拝見した。いずれの提案も、学生自身の経験や体験を出発点とし、身近な違和感や問題意識を丁寧に掘り下げたうえで、具体的なかたちへと落とし込まれていた点が印象的であった。
デザイナーに求められるのは、社会や他者の課題を単なる「外部の問題」として扱うのではなく、自分自身の問題として引き受け、ものづくりへと昇華させていく姿勢である。さらに言えば、課題解決にとどまらず、そこから新たな価値を創出できるかどうかが重要となる。今回の展示では、その点を意識しながら試行錯誤を重ねた学生たちの真摯な取り組みが随所に感じられた。
なかでも、自らの強いこだわりや実感を起点に、新しい価値の創造へと結実させた以下の3作品が、最優秀賞および優秀賞として選出された。

(文責:井上雅弘)

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最優秀賞:西川友梨 「人木人 ― ふたりとき

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評価コメント:

高さ約30センチほどの木の形をした立体を中心に、磁石を内包した葉の形の木片を一枚ずつ重ね、木に葉を茂らせていく作品。二人が向き合い、葉を重ねていく行為を分かち合うことで、自然と会話のきっかけが生まれ、静かで穏やかなコミュニケーションへとつながっていく仕掛けとなっている。
施設で暮らす祖母を見舞う体験、そして自身が他の施設でケアに関わった経験から得た問題意識を出発点に、「言葉に頼らない関係性の構築」というテーマを、極めてシンプルかつ象徴的な行為へと落とし込んだ点が高く評価された。素材の扱いも丁寧で、行為そのものが関係性を育む媒体となっている点に、プロダクトデザインならではの可能性が感じられる提案であった。(文責:井上雅弘) 

優秀賞:加藤昴士 「装走騎士ダービリオン

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評価コメント:

競馬という文化を、子どもにとっても身近で楽しい存在にすることを目指した提案。腕に装着する端末には蹄をモチーフにしたピースが取り付けられ、自分と“縁のある”騎手や馬を認識できる仕組みとなっている。また、鞭をイメージした端末や、腕に装着したピースのスクリーン上で展開されるレース表示など、競馬にまつわる所作や要素が巧みに取り入れられている。
正義のヒーローという子どもに親しみやすいイメージと重ね合わせることで、競馬を単なる大人の娯楽ではなく、憧れや物語性を伴った体験として再構築している点が秀逸である。競馬に対する作者自身の強い思いが随所に感じられると同時に、細部まで丁寧に作り込まれた造形や部品から、高いものづくりの技術力もうかがえた。(文責:森下眞行) 

優秀賞:久野日楠 「LiikeLiike

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評価コメント:

人の感性や身体感覚に働きかけることをテーマにした一連の提案。毛布を膝にかけるだけで、なぜか温かさや安心感を覚える――その日常的で不思議な感覚に着目し、その“謎”を丁寧にひも解いている。実は毛布にはごくわずかなウエイトが仕込まれており、その重さが身体感覚に作用することで、心地よさや落ち着きが生まれていることを、プロダクトとして可視化・体感化した提案である。
「太ももの上に物を置くと落ち着く」という自身の体験を丁寧に振り返り、そこから感覚的価値を抽出し、新しいプロダクトの可能性へとつなげた点が評価された。目に見えにくい感情や感覚を、具体的なかたちとして提示しようとする姿勢は、今後のプロダクトデザインにおける重要な視点を示していると言える。
(文責:井上雅弘)


 


主催:(公社)日本インダストリアルデザイン協会・中部ブロック
協力:セントラル画材株式会社

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