JIDA

CHUBU BLOC 中部ブロック

2023年度卒業制作展訪問

 

公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会
中部ブロック・次世代事業担当
委員長 岡田 心

◆2023年度【卒業制作展訪問】JIDA中部ブロックデザイン賞のご紹介◆

中部ブロック・次世代事業委員会では、本年度もデザイン系大学卒業制作訪問(卒展訪問)を開催し、訪問先毎に優秀な作品を選定し表彰しました。
今後の開催予定はこちらを御覧ください。

本年度のJIDA中部ブロックデザイン賞は以下の方々です。

2023年度JIDA中部ブロックデザイン賞


■大同大学

 2024年2月25日(日)会場:ナディアパーク2Fアトリウム

総評

一言で言えば、全体的な作品の完成度が高く見応えのある作品が多い印象を受けました。
その中で、商品ブランディングとプロダクトを通した体験として、完成度が秀でた作品を選定させて頂きました。
これからのプロダクトデザインの新しい在り方として皆様のご活躍を願っております。(文責:吉田明彦)

 
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最優秀賞:松井洋樹 「幼少期の体験に着目した測定ディバイスの提案」

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評価コメント:
誰もが幼少期に体験した事をデザインを通して、測定デバイスに表現した点は、着眼点としてとてもセンスを感じる。作品としても完成度が高く、観ていて気持ちの良い作品でした。
これから社会経験を積む事で更なる成長を期待しております。(文責:吉田明彦) 


優秀賞:加藤優太 「日本男児が男気を身につけるブランドの提案」

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評価コメント:
ブランド名【IMEKA】は作品を通して内気な男性が女性にアプローチする為に、赤い一輪のバラを贈る事をコンセプトとするパッケージデザインと贈る状況に応じて3段階のレベルを設定し、男女双方の幸福度を向上させるブランドアイデンティティである。
受け手としては賛否両論あると考えられますが、彼の作品は誠実に研究テーマと向き合って男気を身につけたからこそ、キザで潔いブランドを完成させたと評価しました。
これからもデザインと向き合う姿勢を忘れずに応援しております。(文責:吉田明彦) 


優秀賞:瀨木 聖 「トレビアを学べる製品およびパッケージデザインの研究」

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評価コメント:
【マナビア】と言うブランド名を紹介する事を前提としたシリーズ作品のキャラクターやパッケージデザイン、それに負けないプロダクトの完成度はブランディングとして、きちんと惹きつけるモノを感じました。
何より彼自身のプレゼン力の高さにもおどろかされました。
これからもデザインを通して幅広い分野に挑戦して頂きたいですね。(文責:吉田明彦) 

 


■名古屋市立大学

 2024年2月23日(金)会場:名古屋市立大学・北千種キャンパス

総評

参加されました学生の皆さん、プレゼンテーションお疲れ様でした。時代と共に変化する地球環境における問題、家庭生活における問題などさまざまな課題を真正面から捉え、その解決に自分自身の考え方をぶつけながらデザインを学ぶ姿勢は、大変好感の持てる発表の数々でした。どれも甲乙つけ難く素晴らし内容で、これはデザインを進めるにあたり基本行為で、ここをしっかり学ぶ事が今後社会人として新しい価値を創造して行くには欠かせないことだと考えます。これからのご活躍に期待しております。(文責・木村 徹)

 

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優秀賞:工藤帆夏 「高齢者に向けた体に優しい除雪器具/子供に向けた雪遊び型除雪器具」

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評価コメント:
雪国の日常生活で困っている除雪作業を少しでも楽にしようと、作業をしている人たちにアンケートを取り、ハンドルの形状、押す時の重さに対しての対応など、きめ細かく対応している点が評価された。 (文責・木村 徹)

優秀賞:石川ひなた 「MOF(金属有機構造体)のCO2吸着技術を活用した、カーボンクレジットカートリッジのデザイン」

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評価コメント:
環境問題に着目し、CO2を吸収しそれを活用する技術を生活空間で見た目にも違和感なく造形するだけでなく、魅力的な形状に仕上げ、魅力的なまちづくりに貢献している点が評価された。(文責・木村 徹)


特別賞:井倉芳弥 「『転生相伝REPRO-BOX』の製作と実装に向けて」

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評価コメント:
家族の生死に真正面方取り組み、従来あった仏壇の大事な部分を残しながら、現代の生活にマッチさせ営みを大事に継承していく為の仏壇に再生し心の伝承を試みた点が評価された。
欲を言えば、新しい仏壇の形状にもう一工夫魅了が加えられていればよりよかった。(文責・木村 徹)

 


■名古屋デザイナー学院

 2024年2月20日(火)会場:名古屋デザイナー学院

総評
栗谷本先生からのご紹介で今年は造形デザイン学科になって初めての 卒業生という事で、フィギュアの3Dモデル製作が2点とプロダクト作品 が1点の評価となりました。
プロダクト作品である平川さんの「猫の旅」は、猫の首輪にGPS機能付き カメラを装着し、他府県から集まる別荘地で猫を放し飼いして、猫目線で コミュニティ交流を図る提案の着眼点は大変面白かったが、モデル作品が 無かったのが非常に残念でした。
フィギュアの3Dモデルの鵜飼さんの「金剛力士像」安藤さんの「シスター ・ルース」の両作品の骨格からの3Dモデル化技術は、プロ並みレベルで 目を見張るものを感じました。しかしながら、私達がフィギュアの評価軸 を正直、持ち合わせていないので努力賞として1点、選ばさせて頂きました。 審査に合わせて会場で一年生のプロダクト作品を多く見させて頂きました。 来年は、多くのプロダクト作品を審査できる事を期待しています。 (文責:井関 徹)
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努力賞:安藤匠輝「シスター・ルース」

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※写真は本人の希望により加工しております

評価コメント:
一年生からフィギュアの3Dモデル化技術の習得を重ねながら、数々の作品を 手がけ卒業制作としては、新たなアダルトフィギュアの商品価値にチャレンジ したデザイン要素を評価させてもらいました。
今後、プロとして、プロダクト業界でもフィギュア業界でも共通に言える事は 如何に独創的で魅力あるデザイン提案を世に送り出せるかが勝負と思います。 いつの日か企業を離れ、魅力あるフリーのフィギュア3Dモデりストの夢を 叶えてもらいたいものですね。 (文責:井関 徹)

 


■名古屋芸術大学

 2024年2月17日(土)会場:名古屋芸術大学

総評
審査員が異口同音に口にしたのは、様々なスキルのレベルの高さ。これでもか…と感じる「ものづくり」へのパワー。妥協を感じない…むしろ楽しみながら最高のレベルに立ち向かう強さと希望が伝わってきた。発想力、企画力、表現力、世界観…どれを取っても、観る者をワクワクさせる展示だった。デザインの世界には制約も多いが、「楽しいこと」「美しいもの」を扱う、実は自由で夢のある仕事だということを思い出させてくれる…若さとエネルギーに溢れた素晴らしいひとときだった。
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最優秀賞:守屋龍成 【バトルホビー】インセクトキメラ (モジュール型バトル玩具)

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評価コメント:
タカラトミーの「バトル昆虫」カブトボーグシリーズに原型がある様にも感じるが、ミニ4駆などの様に自分がカスタマイズすることでチューンアップしたり、作戦を変えるなど年齢に合わせた遊び方が工夫出来る点が面白い。組み立ても簡単そうだが、勝ち手のひとつである「BREAK!」でパーツが飛び散る構造はIDとして非常に良くできておりリアリティーがある。スタイリングについては、適度なデフォルメで子供にも特徴が分かりやすい造形力をそなえ、何より実際に遊べるワーキングモデルの提示に審査員は全員ヤラレタ😊 (文責:金澤 秀晃)


最優秀賞:小野田亘佑 「NABIKI CONCEPT (月に移動するモビリティー)」

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評価コメント:
美しい。世界観が完成している。アポロ11号が1969年に月面着陸して以来、55年近くが経とうとしているが、極めて理数系一辺倒な装置や場面しか目に触れない宇宙事業をSF映画の様に見事に美しいビジュアルに翻訳してくれた。エネルギー/素材/副産物などが合理的に消化されるイメージから、着物に着想を得たユニークなスタイリングとドライビングポジションまで…そして高いスキルでまとめられた映像に作者の夢とビジョンを感じる。(文責:金澤 秀晃)


優秀賞:松下滉輝 「NISSAN STEALTH」

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評価コメント:
スケールモデルならではのデフォルメ(キャビンが薄いとか大径ホイールにスーパー偏平率など)はあるが、作者はクルマのスタンスを良く理解しており、ホイールを挟んだ面処理/ラインの流れも巧みだ。F117ステルスの造形言語に触発されたスタイリングには「カタチに対する憧れ」を感じ素直にカッコいい! ヘッドランプでエッジの立ったフードは見切りも良さそうで、フラット面が長いフロントオーバーハングのサイド面は空力にも適っている。ローノーズから滑らかなキャビンを経てリアスポイラー下に風が抜けるシルエットは合理的な処理だ。(因みにSTEALTH には、かつて三菱がクライスラーにOEM提供していたGTOの別名:DODGE STEALTH があるため、日産ステルスという響きが新鮮だった…まいっか😊)(文責:金澤 秀晃)


優秀賞:良知恵里花 「ケガレをケにする ハレプロダクト (日常を「ハレ」に彩る日用品など)」

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評価コメント:
一般的に「ハレとケ」は(祝い事などの)非日常と日常だが、これに「穢れ」(ケガレ)を持ち込み、ネガティブな非日常を「ケ」の状態まで取り戻そう…という発想が面白い。それぞれの作品は丁寧に作られ、贈りものに付ける熨斗やペットボトルを簡単にリユースする手法、自分をリトリートする空間を和紙を用いてビジュアル化しているため、「ギフト」「リユース」「リトリート」の他にも「おもてなし」「日本発信」「和の文化」「低刺激市場」など様々な要素が複雑に多く、核となるテーマが少し埋没した点が残念だったが、やりたいことが沢山あるパワーは充分に伝わった。(文責:金澤 秀晃)


優秀賞:折笠 舞 「陶化紙 (折り紙をモチーフにしたテーブルウエア)」

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評価コメント:
店に並んで売られていても違和感の無いクオリティー。折り紙という日本人なら誰もが馴染みのあるモチーフには素朴で原風景的な心地よさと懐かしさを感じる。海外への土産物としての市場もありそうだ。色のセンスもシリーズとして世界観があり、折り紙の色面と裏面が塗り分けられていることが面白いアクセントにもなっている。折り紙をモチーフとした陶器…器や箸置きなどは既に存在するが、形状のバリエーションとして広げたことでシリーズとしてのブランディングに導いていける。セラミック粉体に特殊なパルプを混ぜて抄いた「陶紙」(焼成すると陶器になる紙)も存在するが、敢えて石膏型での鋳込みに拘った造形はかえって味のある存在感を見せてくれた。(文責:金澤 秀晃)

 


■静岡文化芸術大学

 2024年2月16日(金)会場:静岡文化芸術大学

総評
ほぼすべての卒業制作において、実際に使って評価できるレベルまで完成度をあげている点が素晴らしい。
ここでの掲載はないが、実際の自動車に装備した提案は過去に記憶がない。また、こちらも未掲載であるが、アーケードゲームの提案もハード、ソフトともに実際にやり込めるレベルに仕上がっており、作者は達人級であった。他の作品も完成度は同様で、その結果得られる検証は既に次の展開を見据えており、説得力があった。何よりも学生たちが卒業制作を楽しんでおり、イキイキとしたプレゼンテーションが印象的であった。
 
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最優秀賞:松原和美 「cactus ~自由に、並べて、積んで。~​​​​​​​」

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評価コメント:
大きなサボテン型クッションが並べられた空間はとても魅力的で誰もが「触ってみたい、座ってみたい」と思わせるオーラをたくさん放っていた。サボテンといえば「トゲ」であるが、トゲは心地よい肌触りの素材を使って表現されており、ネガティブな要素は全く感じない。それよりもボリュームの異なるバリエーションが面白い世界観を作るとともに多様な使い方を想像させるクリエイティブな要素となっている。また、プレゼンテーション用に作られた背面パネルのビジュアルデザインが素晴らしく、作品の世界観をシンプルに演出しながら、コンセプトの説明を行っている。どれをとってもセンスの良さを感じる素晴らしい作品であった。(文責・後藤規文)


優秀賞:飯村花杏 「チョークホルダーの制作 チョークとチョークイベント発展の可能性」

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評価コメント:
屋外で行うチョークアートイベント用のツールの提案である。丸いスポンジ内にチョークホルダが隠れていて、スポンジを握るとチョークの頭が出てくる構成となっている。地面(黒板やアスファルトなど)に直接描く時は摘むより握った方が描きやすく、スポンジのボリュームがアスファルトの凸凹から指を保護している。パステル調の色も魅力的で、地面に絵を描く以外にもいろんな遊び方がイメージできる道具となっている。試作モデルは自ら製法や着色方法を試行錯誤し、作り出したとか。とても魅力的なものに仕上がっており、製品化を期待したい提案であった。(文責・後藤規文)

 


■名古屋造形大学

 2024年2月14日(水)会場:名古屋造形大学

総評
美術館ギャラリーではなく新校舎を利用しての卒業作品展2年目は、至る所で学生の試行錯誤の跡がうかがえる展示だった。作品については、美しいモビリティや個性豊かな視点からの家電、細部にもこだわった家具や量で圧倒された歯車の構成など、幅広いワクワクする提案が見られた。その中でも、答えに辿り着くには多くの時間と様々な難所が想像される厳しい山にも挑むその姿勢がわかりやすく見られたものに、審査員の評価も集まった。
 
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最優秀賞:木村摘麦 「言の葉戦線」

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評価コメント:
言葉の意味や使い分け方など言葉について改めて考えるきっかけとなる作品。カードゲームという卒業作品ではよく出る手法だが、ここまで完成度の高いものはなかなか無い。ただ、世界観を大切にしすぎた結果か、説明の難しいゲームを伝える方法としては展示方法や内容の見せ方などには疑問を持った。伝わりづらかったにも関わらずこの評価に至ったのは、本人の力量と作り上げ切った世界観がそれを上回った結果である。素直に美しい作品だった。(文責・岡田 心)


最優秀賞:堤 愛華 「Tsunagu ~保護者と子どもをつなぐ子ども用安全器具」

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評価コメント:
子供用ハーネスの問題に様々な視点から解決方法を探った作品。多くの問題に変化球でかわすのではなく、真正面から取り組んだ姿勢がとても気持ち良く評価された。時間内では説明しきれないほどの考察と結果に盛り込まれた情熱に審査員の多くが頷いた。質問にも真正面から答えるその姿は学生ではなくすでに立派なデザイナーであった。(文責・岡田 心)


特別賞:内藤瑠海 「カモルーミモデル 車椅子の走行による負担を減らす車椅子モビリティ」

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評価コメント:
草薙剣をまつる名古屋の熱田神宮の参道や敷地は玉砂利が敷かれている。車椅子の人と同行する人が快適に参拝するための移動補助機器であり、車椅子を使う家族や知人と一緒に玉砂利を踏む音を聞きながら本殿に向かって歩く情景を想像できた。造形性は今後に期待するところが多く、階段の乗越えが難しいことや心理的な考慮などまだ解決できていない課題はたくさんあるが、社会性のある目的の明確さと解決方法をストレートに具体的な形にしたことを評価した。(文責・堀田俊則)

 


■名古屋学芸大学

 2024年1月20日(土)会場:愛知県美術館

総評
新型コロナウイルス感染症のために、大学入学の最初から約1年間リモート授業だった学年の卒業制作展になる。新しい生活や学びが始まる時期に先生や同級生と直接会えないことは、学生それぞれに悩み考えることがあったであろう。そのためか、自分の内面に向き合った自己探究や身近な人への思いやりが個々の制作に現れているように感じた。
 
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最優秀賞:川上真里奈 「TUNE UP」

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評価コメント:
利用者がチューニング(調整)できる余地を残すことを共通テーマに、5つの制作品として提案されている。それぞれの調整できる内容と方法は分かりやすく、端正な形と色使いで統一感のある外観にまとめ上げられている。対象の物理的な寸法に合わせて最適化するだけでなく、気ままに少し崩した調和にチューンアップするのもまた楽しい。(文責:堀田俊則) 


優秀賞:小寺利英 「テトラブロック」
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評価コメント:
「硬いものと柔らかいものの中間」を目指して試行錯誤したがうまくいかず、妥協として硬い素材と柔らかい素材の2種類の部品にしたそうだが、結果的に硬軟の部品を組み合わせたときの造形の面白さにつながっている。テトラ型、X型、I型の少ない形のバリエーションだけでも、硬い部品と柔らかい部品があることで驚くほど有機的で特徴的な形ができあがる。(文責:堀田俊則) 


優秀賞:江頭美保 「Shusi」
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評価コメント:
鋭く飛び出すような円錐形のクレヨンや磁石等と、安定して包容力を感じられる球体に近い形の収納部分が、上手に個性的な形にまとまっている。カラフルなクレヨン・磁石と銀一色の色の対比も良い。思わず描きたくなる勢いがあり、使わない時の強烈な存在感も楽しめる。文房具の形はさまざまな形があることに改めて気付かされる。(文責:堀田俊則) 


おせっかいで賞:桑原杏奈 「やさしいおせっかいを焼く」
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>評価コメント:
母からのおせっかいが大学生になってから優しさだったと気づき、今度は自分が身近な人へ「おせっかいを焼く」ことを形にした焼き物のシリーズ品。造形力はまだ発展途上だが、人の気持ちに向き合ったプロダクトが多い今回の卒展を象徴する制作と考えて特別に賞を創設した。これもまたJIDAの学生に対するおせっかいかもしれない。
(文責・堀田俊則)

 



主催:(公社)日本インダストリアルデザイン協会・中部ブロック
協力:セントラル画材株式会社

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