プロフェッション委員会
PROFESSION COMMITTEE

秘密保持契約(NDA)書式

 

秘密保持契約(NDA)書式について

デザイナー自身の信用保護と法的リスクの軽減のために
フリーランスデザイナーと中小企業の取引における秘密保持契約(NDA: Non-Disclosure Agreement)は、お互いの機密情報を保護し、信頼関係を構築・維持する上で非常に重要です。
秘密保持契約を締結することで、中小企業とフリーランスデザイナーの双方が法的な基盤のもと、安心して業務を遂行できるようになります。今回、JIDAプロフェッション委員会では、日本弁理士会・意匠委員会との合同研究によって、

①NDAデザインタイプと②NDA契約書タイプの2タイプの書式を作成しました。

特にNDAデザインタイプは契約書の取り交わしに慣れていないデザイナーとクライアントに配慮し、分かりやすい言葉と文章で構成し、さらにチェックボックスタイプとすることで、より親しみやすく使いやすい書式となっています。

 

 

①NDAデザインタイプ 雛形

秘密保持契約書(NDA)を、創造のスタートラインに
– より安心して、共に創るために
秘密保持契約書(NDA)というと、どうしても堅くて難しい印象がありませんか?特に、契約書に馴染みの薄い中小企業やデザイナーの方々にとっては、「読みにくいし、誤解してしまいそう」「本当にサインして大丈夫だろうか?」と、不安を感じることも少なくないでしょう。
しかし、NDAは本来、デザイナーと企業が互いを尊重し、対等な立場で、安心して大切なアイデアや情報を共有し合い、より豊かで創造的な活動を共に進めていくための「信頼の土台」として交わされるべきものです。JIDAプロフェッション委員会は、このNDAを「読みやすく、伝わりやすい」そして「法的に安心」なものにするため、新しいあり方を考え、今回「デザインタイプ」の秘密保持契約書を作成しました。
言葉遣いを「です・ます調」にしたり、チェックボックスを取り入れたりすることで、誰にでも分かりやすく。さらに、日本弁理士会意匠委員会とも連携し、分かりやすさと法的な保護の両立にも配慮しています。このデザインタイプNDAは、一方的に渡すものではなく、「一緒に確認し、納得して進める」ためのツールです。堅苦しい書面ではなく、デザイナーと企業が対等な立場でアイデアを出し合い、創造的なコラボレーションを始めるためのスタートラインです。お互いの信頼を形にし、前向きな関係づくりをサポートする「デザインタイプNDA」を、ぜひご活用ください。

情報の取り扱いに関する取り決め_JIDA-JPAA合同研究会_v1.1 .png


 

②NDA契約書タイプ
密保持契約書式

本秘密保持契約(NDA)の最も重要な目的は、デザイナーと企業が互いに対等な立場でアイデアや情報を提供し合い、より良い創作活動を促進することにあります。また、両者間で共有される秘密情報が適切に管理されることで、お互いが安心して率直な意見交換を行い、腹を割って話せる環境を構築することを目指しています。

NDAは、デザイン業務の依頼や図面、試作品などの具体的な情報を提示する前に締結されるべきものであり、口頭での約束だけでは「言った・言わない」といったトラブルに発展するおそれがあるため、書面による確認が重要です。ただし、業務委託前の段階であまりに詳細な内容を盛り込むと、契約に不慣れな中小企業やデザイナーにとっては負担や抵抗感を覚えることもあります。
そこで、本NDAでは、契約に不慣れな方々にも配慮しつつ、秘密情報の保護と円滑な情報交換という目的を確実に果たせるよう、必要最低限かつ実効性の高い条文に絞って構成しています。
なお、契約書の内容や形式は、相手企業の規模(中小企業か大企業か)、プロジェクトの性質(単独か複数者との協業か)などに応じて柔軟に調整されることが望まれます。各条文には、それぞれの実務上の留意点や課題を補足しておりますので、適宜ご活用ください。
本NDAは、あくまでも秘密情報の保護と円滑な情報交換のためのものであり、具体的な業務委託内容、成果物の権利帰属、不採用になったアイデアの取り扱いなどについては、別途「業務委託契約書」で詳細を定めることが適切です。業務委託契約については、JIDAホームページ「デザイン契約の考え方と書式」をご参照ください。
(URL:https://www.jida.or.jp/activity/research/profession02/design-contract)

 

秘密保持契約書

 秘密保持契約書のタイトルについて:「秘密保持契約」という表現は威圧的に感じられることがある。相手によってはタイトルを変更して、より柔らかく親しみやすいタイトルにしても良い。たとえば、以下のようなタイトルが考えられる。

・情報の取り扱いに関する取り決め

・デザイン委託前に関する基本契約書

・はじめての情報の取り扱いに関するお約束

また、デザインや言葉遣いを工夫することで、親しみやすい印象を与えるアプローチも有効である。

なお、法的にはタイトルの有無やデザインスタイルが契約の法的効力を直接左右することはない。重要なのは、契約内容を双方が同意することである。ただし、将来的な紛争を避けるためには、「契約書」という明確な名称にしておく方が無難である。

経験豊富な企業向けには従来の表現を、中小企業やデザイナーなど不慣れな相手には、より簡易でデザインを意識したフォーマットを用いることで、法的安定性を保ちつつ、契約締結への心理的障壁を低減させることが可能である。

 

○○株式会社(以下「甲」という。)と×××株式会社(以下「乙」という。)とは、△△△△業務(以下「本件業務」という。)に関し、甲及び乙が相互に各種情報を提供することで合意した。これに伴い、甲及び乙はこれに関連する秘密保持に関して次のとおり契約(以下「本契約」という。)する。

 3者以上の関与:デザイナーと企業の間だけでなく、プロジェクトによっては3者、4者(甲乙丙丁)が関わるケースが非常に多い。その場合は、(甲乙丙・・)のように当事者を追加することで対応可能。

本件業務について:具体的な業務内容を契約書自体に詳細に書く代わりに、見積書のタイトルなどを引用し、「別途参照」などの工夫をすると良い。これにより、NDAをシンプルに保ちつつ、業務内容を明確にできる。

 

 

第1条(目的)
 甲及び乙は、本件業務に関して、互いに対等な立場でアイデアや情報を提供し合うことを目的として、本契約を締結する。

本契約は、甲及び乙が秘密保持義務を遵守することで、両者間で共有される情報が適切に管理され、互いの利益が公平かつ適正に保護されることを目的とする。

 目的について:目的条項を設けることで、なぜ本契約を締結するのかという趣旨が明確になり、当事者間の認識の相違を防ぎ、契約に対する堅さを和らげる効果が期待される。

 

 

第2条(定義)

  1. 本契約において「秘密情報」とは、甲及び乙双方が相互に開示する有形無形の技術上・営業上その他の情報(個人情報保護法に基づく個人情報を含む。)であって、相互に提供される各種情報はすべて秘密情報とする。ただし、次の各号に掲げる情報は秘密情報として取り扱わない。

(1)開示を受けた際、既に自ら所有し、又は第三者から入手していたもの

(2)開示を受けた際、既に公知公用であったもの

(3)開示を受けた後、甲及び乙それぞれの責によらないで公知又は公用となったもの

 

 秘密情報の定義について:本条文では、基本的にすべての情報を秘密情報と定義している。これに対しては、「拡大解釈に過ぎる」との指摘があり、特にデザイナーが他の案件で同様のアイデアを再提案できなくなるおそれがある点で、「出し損」につながるとの懸念が示された。一方で、安心して意見交換できる環境を構築するためには、包括的な定義が不可欠であるとの意見もあり、最終的に「すべてを秘密とし、そこから除外を設ける形式」が妥当であるとの見解に至った。(後述する3条の記載により「出し損」の問題は解消すると思われる。)

適用除外(ただし書き部分)について:本件の適用除外項目は、比較的シンプルな形で記載されている。本項目は、INPITが提供する秘密保持契約書に準拠しており、これで十分であるとの見解に至った。一方で、実務上は、当該情報を既に保有していたことについて、別途証拠を保持していない場合、トラブル発生時に不利となるおそれがあるとの指摘もある。証拠としての保全手段としては、例えばタイムスタンプを取得し、証拠化しておくことが有効である。

 

第3条(秘密保持)

1.甲及び乙は、相手方から得た「秘密情報」を第三者に開示、漏洩または本検討以外の目的に使用してはならない。

2.前項の定めにかかわらず、甲及び乙は、本検討のために第三者に「秘密情報」を開示する必要がある場合には、事前に相手方の書面による承諾を得なければならない。

ただし、この場合、秘密情報を開示した者は、当該第三者との間で本契約と同等の義務を定めた秘密保持契約を締結するとともに、当該開示にともなう全責任を負わなければならない。

 

第4条(目的外使用の禁止)
甲及び乙は、相手方から得た「秘密情報」を本件業務以外のいかなる目的にも使用してはならない。

秘密情報の「出し損」について:秘密保持契約書の懸念点として、デザイナーが提示したアイデアやコンセプトが契約やプロジェクトの不成立により活用されず、「秘密情報」に該当することで他案件への転用もできなくなることで、デザイナー側が一方的に不利益を被る「出し損」の状態について大きな懸念がある。

また、契約に至らなかった場合でも、企業側にアイデアだけが残る結果となり、デザイナーが「泣き寝入り」せざるを得ない状況に陥るリスクがある。過去には、提案したアイデアを知られ、転用されたが、「知らなかった」と主張された事例もある。

さらに、不採用となったスケッチやアイデアの知的財産権の帰属が不明確である点も問題視され、採用されなかった案の取り扱いについて明確なルールがないことが「出し損」の一因となっている。

これらの課題に対応するため、本条文では「相手方から得た」秘密情報についてのみ、第三者への開示や漏洩、本検討以外の目的での使用を禁じる旨を定めている。この「相手方から得た」という表現により、デザイナー自身が持ち込んだコンセプトやアイデアは拘束の対象とならず、他案件での展開も可能であると解される。

 

第5条(知的財産権)

1 甲及び乙はいずれも、相手方の秘密情報に依拠して、発明、考案、意匠、著作物その他の知的財産権の目的となるもの(以下「発明等」と総称する。)を得た場合には、相手方に対し速やかに通知し、また、当該発明等に関する知的財産権の帰属及び取扱いを別途甲乙間で協議のうえ決定するものとする。甲及び乙は、当該発明等を日本法に則って適正に管理する。

2 次の各号のいずれかに該当する発明等に係る知的財産権は、その発明等をなした当事者に単独で帰属するものとする。

(1)各当事者が本契約締結日前から保有するもの。

(2)各当事者が、本目的を遂行する過程で、相手方から提供された秘密情報に依拠せずに独自に創出又は取得したもの。

不採用案の帰属と交渉の必要性:第4条の記載により、デザイナーが自身のアイデアやコンセプトを他案件で展開することは可能であると解される。しかし、実際に複数案を提出し、そのうち1案のみが採用された場合、残りの不採用案の帰属が不明確であると、「出し損」のリスクが生じる。

この点については、企業がすべての案を買い取る対価を支払わない限り、不採用案はデザイナーに帰属し、自由に使用できることを前提に交渉すべきであるとの意見が出された。

また、不採用案の帰属に関しては、秘密保持契約(NDA)ではなく、業務委託契約などで明確に定めておくことが望ましい。具体的には、「不採用の案は創作者に帰属する」といった文言を契約書に明記することが有効である。

 

第6条(秘密情報の返還)

甲及び乙は,本契約が終了したときまたは相手方から要請を受けたときは,相手方の選択に従い,直ちに秘密情報が記録された書面その他の媒体を相手方に返還するかあるいは廃棄しなければならない。

 

第7条(損害賠償義務)

甲及び乙は、本契約に違反して、相手方に損害を与えた場合には、相手方に対し、損害(相手方の弁護士費用を含む。)の賠償をしなければならない。

 

第8条(契約の有効期間)

本契約の有効期間は、令和○○年○○月○○日から令和○○年○○月○○日までとする。

契約の有効期限について:案件ごとに個別具体的な判断が必要であるが、実務上は3年程度とされるケースが多く、契約の自動延長を規定する例も少なくない。

一方で、秘密保持義務に関する条文において「本契約終了後も存続する」と定める場合、実質的に永続的な義務を課すこととなり、デザイナーが自身のアイデアを半永久的に再利用できなくなるおそれがある。この点については、「企業に一方的に有利な契約」であり、「そのような形であってはならない」との強い指摘がなされた。

そのため、契約の有効期間を明示することに加え、終了後に存続する条文(例:第○条から第○条)を明確に区分し、秘密保持義務の範囲と期間を適切に制限することが求められる。これにより、有効期間終了後における情報の再利用に関する自由度を確保することが可能となる。

 

第9条(協議解決)

1 本契約の条項の解釈及び本契約に定めない事項につき疑義又は紛争が生じた場合、甲及び乙は誠意をもって協議解決する。

2 協議にて解決しない場合は、〇〇地方裁判所を第一審の専属的管轄裁判所とすることに合意する。

 

本契約締結の証として本書2通を作成し、甲及び乙が記名押印の上、各自1通を保有する。

 

令和××年×月×日

 

                住所:○○○

              甲 ○○○株式会社

                代表取締役 ○ ○ ○ ○ 印

 

                住所:〇〇○

              乙 ×××株式会社

                代表取締役 ○ ○ ○ ○ 印


 

その他の雛形

・① 秘密保持契約(NDA)書式  (ページトップへ戻る)

・② 受託契約書式

・③ ロイヤルティ契約書式