フクイチ見学ツアーレポート(2025/9/30)
9月末、JIDA主催で福島第一原発見学ツアーを実施しました。施設内は撮影が全面禁止されており、見学時には所持品をすべて預ける必要があるため、ビジュアルで詳細をお伝えすることはできません。しかし、案内役の東電スタッフが撮影してくれた数枚の写真と、参加者の感想、そして私の拙い言葉ではありますが、見学の様子を報告いたします。
この見学ツアーは、実施までに約1年の予約が必要で、世界中から申し込みがあり、現在も約1万人が予約待ちしている人気の社会見学プログラムです。今回は「ホープツーリズム」を運営する公益財団法人福島県観光物産交流協会を通じ、JIDAとして団体申込みを行うことで参加が実現しました。
事前にメディアやWebで情報を得ていたものの、実際に破損した原発事故現場を、防護服なしで数十メートルの距離から目の当たりにした体験は、想像をはるかに超えるものでした。事故被害の実態、過去から現在、そして未来へと続く長い時間軸、多くの人が関わり続けている現状を強く実感し、負の遺産がいまも進行中であることを深く理解する機会となりました。
東電スタッフの説明は、まず謝罪から始まり、施設概要や修復計画についても非常に丁寧で分かりやすいものでした。安全に解体を完了させるには、計画上は数十年とされていますが、実際には数百年規模になる可能性もあるのではと想像できます。
言葉では表現しきれませんが、例えるなら、ニューヨークのグラウンド・ゼロや広島の原爆ドームを訪れた際に抱いた感覚に近いものがあります。原子力という目に見えない力は、適切に活用されている間は恩恵をもたらす一方で、極めて高いリスクを伴い、廃炉や廃棄物処理といった後処理方法も確立されていません。事故前後の現場に残る見えない放射線を想像しながら、今後のエネルギー課題について誰もが向き合わざるを得ない場所だと強く感じました。
原発見学後は、地元観光協会スタッフの案内により周辺地域をバスで巡り、復興状況の説明や新たに店舗をオープンした方々との対話など、フィールドワークを行いました。震災の傷跡がなお残る場所もあり、震災から14年が経過した今も続く複合災害の影響を学べる、大変貴重な体験となりました。
JIDA東日本ブロックでは希望者が多ければ再訪を企画します。ご希望などお聞かせいただければと存じます。
■東日本ブロック長 佐野 正
【フクイチ見学ツアー参加者感想】
■A氏
1号機から4号機まで建屋が変化している様子や、タンクが津波で凹んでいる様子を見る事が出来、水素爆発と津波の威力を実感しました。検査機や施設内、働く人たちの様子を見る事が出来て、大変貴重な経験でした。
■M氏
原発事故の現場を間近で見られたことで、時間の経過と携わった方々の努力を感じました。ただ、廃棄物の処理や跡地の使い方など決まっていないことも多く、エネルギーとの関わり方について考えさせられました。
■H氏
福島第一原発の構内のツアーは、説明が大変分かりやすかった。バスで構内を案内するだけでなく、2カ所でバスを降り、屋外で説明を受けることにより、放射線量が下がり、安全に作業できる環境になったことを肌で感じることができた。
廃炉作業中の原子炉建屋を目の前で見ながらの説明は、現実に起こった事故だということを改めて感じた。廃棄物や燃料の処分場所など課題はたくさんあるが、廃炉にむけて確実に前進していると感じ、希望がもてた。
廃炉資料館を見学する時間がなかったのが残念だった。
原発の構内ツアーの後、周辺の町の様子をガイドさんに案内してもらった。最近できたお店や施設の情報よりも、原発事故によってどんな影響があったかなど、原発事故に焦点をあてた内容をもっと聞くことができればよかった。
大変貴重な体験ができ、参加してとてもよかった。
■I氏
放射線防護服姿で歩く二名の作業員をバスの窓から目撃しました。
唐突に現れたSF映画のような光景に、私は少し混乱しました。
原子炉建屋まで約80m、海抜33mの高台に立った私の眼前には、印象的なモザイク模様の外壁の一部や、倒壊した核燃料棒取扱クレーンの瓦礫が手にとれるようにありました。
太平洋からの海風を心地良く感じつつ巨大な残骸を目にしていることへの違和感が、重い塊となって身体の中に残るのを感じました。
■T氏
東日本ブロックデー 福島第一原発事故現場見学会の感想
2011年3月の原発事故発生から14年半。
福島第一原発の現場は、当時の極限的な状況から著しい変化を遂げていた。かつては完全防備の防護服なしでは立ち入り不可だった敷地内の大半で、現在、私たちは私服での行動が可能となっている。
この事実は、除染作業と建屋の安定化がもたらした復旧の確かな成果を示すものだ。
しかし、脅威が完全に消えたわけではない。事故炉に近づくバス車内では、据え付けられた測定器のベクレル値が急上昇し、目に見えない放射線の存在を容赦なく突きつける。
現場で目撃する原子炉建屋の凄まじい破壊は、報道映像では決して伝わらない圧倒的なスケールを持つ。それは、人智を超えた自然災害が引き起こした未曾有の複合災害の痕跡だ。
だが、この絶望的な光景の中にも、復興への希望を実感した。
紺碧の空と爽やかな海風に包まれながら、破壊の跡地に立つ我々は、「人智」を尽くしてこの難局に立ち向かい、復旧の道を一歩ずつ進む人類(日本人?)の粘り強さを象徴している。
この現場は、人類が過ちと向き合い、忍耐と知恵をもって未来を切り開こうとする、希望の象徴であった。
■P氏
事故から約15年が経過した福島第一原子力発電所の現場を、自らの目で確認する貴重な体験ができました。
まず大熊町に入ると、駅や道路に設置された線量計が今も現実を伝え、幹線道路の脇道にはバリケードが残されていました。
一方で、除染や再整備の進んだ地域も多く、少しずつですが日常を取り戻しつつある様子も感じられました。
施設に入ると、改めて事故の経緯と廃炉に向けた取り組み、燃料デブリの取り出し計画について説明を受けます。
そこから原発構内への入退場。ここでは徹底した安全管理がされており、私達や作業員の安全確保がされています。
構内では、まさにメディア等で見たことのある風景。倒壊した設備などその惨状が広がると同時に、
原子炉建屋に設置されるクレーンや冷却水処理設備など、着実に回復作業の準備が進められている様子も確認しました。
視察の最後にその処理水についての説明を受けました。
科学的根拠に基づいた管理がされており、むしろ過剰なまでの安全を確保することで、世界の信頼を得る努力をしているようでした。
私達は、食から産業まで日々 電気エネルギーの恩恵を受けて活動しています。
今現在、原発はそのエネルギーを発電する上で最も効率的であることは間違いありません。
単に危険視するのではなく、これを教訓とし今後も現代のエネルギーとして正しく活かすべきと強く感じました。