第108回 樹脂素材と表面処理の最前線を体感する :: JIDA公式サイト
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第108回 樹脂素材と表面処理の最前線を体感する

 

第108回勉強会 塚田理研工業株式会社 工場見学会【開催報告】
  JIDA会員限定の特別企画として、塚田理研工業株式会社のご協力のもと、工場見学会と勉強会を開催しました。 樹脂素材への表面処理は、製品の外観を整えるだけでなく、質や質感、機能、ブランド価値にも影響する重要な要素です。 JIDA素材加工研究委員会では、樹脂の表面処理のバリエーションを収録した「JIDA STANDARD SAMPLES/樹脂の素材と表面処理集」(Vol.1・Vol.2)を制作し、多くのデザイナーに活用されています。 今回は、このサンプル集に収録されている現物サンプルの制作にご協力いただいた塚田理研工業株式会社を訪問し、同社が手がけるプラスチックめっきを中心とした表面処理技術について、実際の現場を見ながら学びました。 2024年3月に開催した第102回勉強会では、塚田理研工業株式会社の技術者を講師に迎え、「めっきで何が解決できるか」をテーマとして、プラスチックめっきの基礎から最新技術、環境対応までをご解説いただきました。 今回はその内容からさらに一歩進め、実際の工場に足を運び、めっき工程や生産設備、加工事例を直接見て、触れて、体感する機会となりました。

【開催日】 2026年7月28日(火)13時~15時30分
【題 目】プラスチックめっきの技術と可能性を学ぶ工場見学会
【講 師】塚田理研工業株式会社 営業部 部長 矢島氏、課長 松下氏、主任 原氏、沼野氏
【参加人数】 16名(会場16名)
【会 場】 塚田理研工業株式会社(長野県駒ヶ根市)

塚田理研工業株式会社 外観塚田理研工業株式会社 外観

素材と加工技術への理解を深める活動の一環として、長野県駒ヶ根市にある塚田理研工業株式会社の工場見学会を開催しました。 当日は、めっきの基本的な仕組みや機能性めっき、環境への取組などについてご講義いただいた後、実際のめっき加工現場とショールームを見学しました。 加工技術の可能性だけでなく、工程の自動化、作業環境の改善、水資源の再利用など、環境に配慮したものづくりについても理解を深めることができました。 デザイナーにとって、加工技術と製造現場への理解を深め、新たな発想や提案につなげる学びの時間となりました。

勉強会参加者第108回勉強会 参加者 

 


【当日の内容】

塚田理研工業株式会社 原主任による挨拶

 

1.講義 プラスチックめっきの機能と可能性について

塚田理研工業株式会社の沼野氏より、会社紹介の動画を交えながら、プラスチックめっきの基礎や同社の技術、環境への取り組みについてご講義いただきました。 塚田理研工業株式会社は、創業から63年を迎えるプラスチックめっきの老舗企業です。長年にわたって蓄積した技術をもとに、多様な素材や色調への対応に加え、少量多品種の加工にも取り組んでいます。 めっきとは、素材の表面に金属の薄い膜を形成し、外観や性能を向上させる表面処理技術です。 プラスチックめっきは、樹脂に金属のような光沢や質感を与える加飾目的だけでなく、導電性、静電気対策、耐久性、電磁波シールド性などの機能を付加する目的でも利用されています。 同社では、CFRPやPPSをはじめとする、めっき加工が難しいとされる素材にも対応しており、その技術力が高く評価されています。 また、金型、成形、研磨などの仕上げ、めっき、塗装、組立、検査、パッケージまで、めっきの前後工程を含めた一貫受注に対応しています。素材や形状、求められる外観や性能、数量、コストなどの条件に応じて、複数の加工方法から適切な仕様を提案できることも同社の強みです。


講義では、主に次のような内容をご紹介いただきました。

  • TPマスキングを活用し、めっき工程と連動してマスキングを取り外す技術を確立していること
  • ISO 9001を取得し、QC活動を通して品質の維持・向上に取り組んでいること
  • 設備の自動化や作業環境の整備、安全管理を進め、かつてのめっき工場が持たれていた「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージを変える取り組みを進めていること
  • 環境負荷の低減に向け、クロム酸を使用しない「クロムフリー」技術の研究開発を進め、実用段階に至っていること
  •  めっき工程で使用する水について、水洗水から成分を回収し、再利用することで、資源の有効活用と環境負荷の低減に取り組んでいること


一方、めっき前の工程には、製品を専用治具へ取り付ける「引っ掛け」をはじめ、現在も人の手と判断が欠かせない作業があります。 同社では、熟練技能者を囲んだ勉強会などを通して、技術や経験の継承に取り組んでいます。また、年に一度「会社を考える会」を開催し、技術だけでなく、塚田理研工業株式会社が大切にしてきた考え方や企業文化の継承も行っているとのことでした。



[写真]めっき方法の違い・カラーの違いが一目で確認できる 塚田理研工業製・色調サンプル帳

 

2.めっき加工工程の見学 

※工場内は写真撮影禁止のため、掲載写真はありません。

工場では、複数の大型めっき槽を順に自動で移動しながら加工されていくめっき工程を見学しました。製品の工程管理は二次元バーコードで行われていました。 各工程では大量の水を使用して洗浄が行われます。長野県の良質な水も、めっき品質を支える要素の一つとなっているとの説明がありました。 製造現場では、製品の進捗や設備の稼働状況を確認できるよう、工程の見える化が行われていました。 製品の移動工程には一部ロボットが導入され、運搬作業の自動化と品質の安定化が図られていました。 一方、めっき槽へ入れる前には、製品を専用の治具へ取り付ける「引っ掛け」と呼ばれる工程があります。 製品の形状やめっきを施す範囲を確認し、電気が適切に流れる位置や向きを判断しながら取り付ける必要があるため、現在も人の手で行われています。 治具への取り付け方は、めっきの厚さや仕上がりにも影響します。作業者の経験と判断が、品質を支える重要な工程であることを学びました。 自動化できる工程には機械やロボットを活用し、人の判断や技術を必要とする工程は熟練した作業者が担うことで、安定した生産と品質を実現している様子を確認することができました。

 

 

3.ショールーム見学  

多様なめっき加工と採用事例


[写真]左:静電気対策めっき 右:イオンプレーティング 虹色

ショールームでは、自動車部品、電子機器、生活用品など、さまざまな製品へのめっき加工事例を見学しました。 自動車部品への採用事例としてレクサスの車両が展示されており、内外装部品にめっきがどのように使用されているかを、実際の製品を通して確認しました。 参加者は展示されたサンプルを手に取り、表面の感触や光沢、色の見え方などを確かめました。 同じめっきであっても、使用する金属の種類、表面の光沢、下地処理などによって、色や質感が大きく変化します。実物に触れることで、写真や資料だけでは分からない違いを五感で体感することができました。 見る角度によって虹色に変化して見えるイオンプレーティングによる加飾表現についても紹介されました。

イオンプレーティングは、真空中で製品の表面に薄い膜を形成する表面処理技術です。多彩な色調を表現できるだけでなく、表面硬度や耐食性を向上させる機能もあります。

 

 

4.質疑応答

工場見学見学終了後は会議室へ戻り、参加者からの質問にご回答いただきました。
 

エッチングを施したスイッチ部へのめっきを検討している参加者からは、めっき膜が薄く、剥がれやすいことが課題として挙げられました。
これに対し、硬度や耐久性の向上が期待できるイオンプレーティングも選択肢の一つとして紹介され、実際のサンプルを手に取りながら確認が行われました。

 展示会での提案方法についても紹介がありました。
かつては自動車部品を中心に展示していましたが、近年はグラスやボールペンなど、既存の用途にとらわれない「やってみた」事例を展示し、新しい可能性を伝える提案型の展示へと変化しているとのことでした。
事例として、光沢仕上げとつや消し仕上げを施したガラス製のコップを拝見し、見た目の光沢感だけでなく、触れたときの感触の違いも体験しました。
 

3Dプリンター×めっきのとりくみとして、
ストラタシス製3Dプリンタによる造形品へのめっき加工や、試作、小ロット加工への対応も進められています。
塚田理研工業株式会社では3Dプリンタを保有しているため、3Dデータを送付することで、造形からめっきまでを含めた試作方法を提案できるとの説明がありました。

そのほか、参加者からは多くの質問が寄せられ、実際の製品事例や加工条件を交えながら、一つひとつ丁寧にご回答いただきました。


まとめ

今回の見学では、めっき加工の技術だけでなく、排水や廃棄物の管理、水資源の再利用など、環境負荷を低減するための具体的な取り組みについても学ぶことができました。
大規模でありながら管理の行き届いためっき工程と、生産設備の規模には強い印象を受けました。

また、自動化された設備だけでなく、作業者の経験や判断が仕上がりを左右する工程があることを知り、技術と技能の両方によって品質が支えられていることを実感しました。
めっきは、製品の外観を整えるだけでなく、素材に新たな機能や価値を加える技術です。 デザイナーが加工技術や製造上の条件を理解することは、実現性の高い提案につながるだけでなく、既存の技術から新しい用途や表現を生み出すことにもつながります。
実際の製造現場を見学し、技術者の方々から直接お話を伺うことで、資料だけでは得られない多くの気づきを得る貴重な機会となりました。

最後になりましたが、ご多用のなか講義、工場見学、ショールーム見学、質疑応答にご対応いただきました塚田理研工業株式会社の皆様に、心より御礼申し上げます。

 

【参考情報】
JIDA STANDARD SAMPLES
素材加工研究会 第102回勉強会「めっきで何が解決できるか」