【開催趣旨】
素材と加工技術に関する理解を深める活動の一環として、染色加工事業を岡山で手掛けるセイショク株式会社の工場見学会を開催しました。
繊維産業においては、国内でも年間約18億㎡にもおよぶ生地が生産される一方で、品質
基準を満たさない「規格外品」となる生地が約900万㎡以上存在し、その多くが焼却処分されています。
この“見えない廃棄”に着目し、新たな価値を創出する取り組みとして、セイショク株式会社は布の色や質感を損なわない独自のアップサイクル技術「NUNOUS(ニューノス)」を開発し、持続可能な生産活動と社会課題解決を進めています。
今回の勉強会(見学会)では、同社の基幹事業である繊維染色工程の全体像を見学した後、
「NUNOUS®」によるアップサイクル工程をご紹介いただきました。素材の可能性を広げ、サステナブルな社会の実現をデザインの力で支えるための学びの場とすることを目的としました。
※「NUNOUS®」は2023年度のJIDAデザインミュージアムセレクションVOL.25に選出されています。詳しくは、こちらをご覧下さい。
https://jida-museum.jp/selection/WEoK829t
【開催日】 2025年10月2日(木)13:00~17:00
【題 目】
「どうする?繊維業界に潜在する大量の布廃棄。岡山発、美しいアップサイクルに学べ」
【講 師】セイショク株式会社 代表取締役社長 姫井明 氏
【参加人数】 5名(会場5名)
【会 場】 セイショク 岡山工場(岡山市北区中井町2丁目)
【当日の内容】
1,ご挨拶 ~老舗染色加工会社のアップサイクルへの挑戦について~
(セイショク代表取締役社長 姫井明 氏より)
・1880年(明治13年)に倉敷市で織物製造業からスタートした140年以上の歴史ある会社です。現在では岡山工場で染色加工事業を中心にワーキングユニフォーム生地・人工皮革、カラーデニム生地の染色整理加工を中心に手掛けています。
・培ってきた加工技術力や生産管理力により生まれる「品質の安定性」や「色の再現性」といった強みをより活かし、更なる生産効率の追求にも取り組んでいます。
[写真]セイショク代表取締役社長 姫井明 氏
・日本の繊維製品の品質基準は非常に高く高品質ですが、その反面、基準に満たない「規格外品」が存在します。布の「規格外品」はリサイクルが難しく、多くは粉砕や焼却などの処理が行われてきました。
・長い工程の1つ1つに当社技術者・スタッフは魂を込めた仕事を施しているのに、「規格外品」が粉砕や焼却されてしまう現実を前に、「自分たちで何かできないだろうか」、「そこにモノはある、自分たちで創ろう」と挑戦をはじめたのがNUNOUS(ニューノス)です。
[写真]セイショク執行役員(東京支店長)清水隆行 氏(左)、姫井明 氏(右)
・NUNOUSは、未活用布と植物由来ポリマーを数百枚積層し圧着したのち、水平に薄くスライスして製造します。一つとして同じもののない自然の木目や石目柄のように、再現性のない風合いをもつマテリアルであり、2018年の事業化以降、様々なアワードもいただき、今では国内はもちろん海外からも問い合わせ等を多くいただいています。
[写真]布の「規格外品」の多くは粉砕や焼却などの処理をする
[写真]一つとして同じもののない風合いをもつマテリアルに
・さらに、ここ最近は、例えばオフィス・工場で廃棄予定の制服や作業服、旅館やホテルで不要になった館内着・浴衣など、お客様由来の不要になった「布」をアップサイクルして、壁紙やサイン、ノベルティなどに生まれ変えさせる、言わば”クライアントオリジナル“NUNOUSも数多く生まれています。
[写真]競輪選手ユニフォームのアップサイクル例
[写真]ホテル館内着(左)、旅館浴衣(右)のアップサイクル例
[写真]JR岡山駅のお土産コーナーにも並ぶNUNOUS製品
2,岡山工場(繊維染色工程)の見学
・「染色」といっても単純に「色の無いものに色をつける」というものではなく、染色前までの長い前処理工程、染色後の長い後加工工程の中での作り込み・検査を経て、ようやく製品として世に送り出されていきます。
・以下、今回見学した各工程を写真で簡単にご紹介します。
[写真]工程① 原反を縫い合わせる
[写真]工程② 精錬漂白を行う、洗浄後は見間違えるほどの「白さ」に
[写真]工程③ 染色(お客さま指定の色相にするために調合した染料を付与)
[写真]工程④ 検反(生地欠点、加工欠点を検査し、格付け(A反・B反・C反)を行う
[写真]工程⑤ 巻き取り、包装
3,岡山工場(NUNOUS:アップサイクル工程)の見学
・NUNOUSは、活用されていない布資源と植物由来ポリマーを数百枚積層し圧着したのち、水平に薄くスライスして製造します。
・以下、今回見学した各工程を写真で簡単にご紹介します(スライス工程は外注)。
[写真]工程① 前処理、剪断
[写真]工程② 積層用の治具(左)、サトウキビ由来ポリマー(右)
[写真]工程③ 圧縮
【参加者の声】
参加者から、下記のような感想がありました。
・開発背景など詳細にお話をうかがうことができ、大変気付きの多い勉強会でした。
・当たり前に使っている様々な布製品にもっと愛着を持とうと思いました。
・今後、NUNOUSを何らかの形で活用し、新たな価値創造のデザインをしてみたい。
・見て、触って、感じることが素材を知ることにつながると改めて感じることができました。
・素材そのものを五感で堪能させていただきました。
・仕上がりのテクスチャーやビジュアル、生産工程と作り手の顔をすべて体感でき、楽しい時間でした。
[写真]見学の様子
[写真]記念写真
(参考)
「NUNOUS®(ニューノス)」ブランドサイト https://nunous.jp/
セイショク株式会社 ホームページ http://www.seishoku.co.jp/