JIDA

第16回「ポリマー素材情報」

 

2005年4月13日
(株)デュポン 
植村教介氏、酒井修司氏、内山宏志氏
参加者 : 28名

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<デュポン社のポリマー素材情報>

テーマ1:<美しい外装素材としてのエンプラの可能性>
結晶性エンジニアリングポリマー*1(PAナイロン樹脂、PBT・PETポリエステル樹脂、
POMポリアセタール樹脂、など)とその加飾技術(原料着色、塗装、印刷、めっき、
スパッタリング、レーザーマーキング、及びエラストマー*2やアイオノマー樹脂*3
による2色成形、被覆成形)

*1ザイテル(R)ナイロン樹脂、クラスチン(R)PBT樹脂、ライナイト(R)PET樹脂、
デルリン(R)アセタール樹脂
* 2ハイトレル(R)熱可塑性ポリエステルエラストマー(東レデュポン)
* 3ハイミラン(R)またはサーリン(R)アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル)

エンプラは構造部材や機械要素部品、汎用樹脂は外装部品、という「住み分け」イメージ
は今でも多くの製品のあり方の一つです。しかし、そのどちらか一つが製品機能の全て
を担うことができればコストなど設計上の合理性を高めることも可能です。
つまり、汎用樹脂の物性上の制約を補う形状(厚肉など)で行くか、エンプラに外装と
しても十分に美しい特性を与えるか、と言うようなことでしょうか。今回はデュポン社
の後者への取り組みの成果として、ナイロン系の樹脂やアセタール系の樹脂への各種加
飾技術、美しい透明厚肉成型が可能な「ハイミラン」、ソフトな触感でデザインの幅を
広げる「ハイトレル」などの詳しい紹介をしていただきました。


テーマ2:<耐久消費財への生分解性素材の応用>

どのような製品でもその寿命が尽きるまで形態を維持している必要は当然ながらあるわ
けですが、現今のIT関連製品のようにライフサイクルが意図的に短縮されることに同調
するかのように、使用材料の短命を許容することは正しいあり方でしょうか。
仮にある面で陳腐化してもモノとして存在し続けることを前提にその素材選択も考えら
れるべきではないでしょうか。デュポンの生分解性素材バイオマックス(R)は積極的に
分解する環境におかない限り分解しません。(通常の使用状態で不用意に劣化していく
ことはない−あたりまえのようですが普通のプラスチックでも紫外線劣化など、意図に
反して分解が始まることは極力ないように配慮されるべきことです。)

バイオマックス(R)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を基に分子設計された「加
水分解性・生分解性樹脂」です。前回ユニチカさんに紹介いただいた「テラマック」は
ポリ乳酸(植物性)生分解性樹脂だったのに対し、バイオマックスは石油からつくられ
るポリエステル樹脂だというところが大きく異なります。デュポン社は、たとえ原料が
植物であっても、それを育て、プラスチック材料に加工するまでの<トータルエネルギ
ー量>で比較すると、石油を原料にしたバイオマックスの方が優れているという主張を
されています。

生分解性プラスチックは、現在各社が開発を競っている分野ですが、今後どのタイミン
グでどのタイプの製品が普及競争に勝っていくのか、本当に楽しみなところです。
それにも我々デザイナーが今後どのようなチョイスをしていくのか、という点で決して
無縁ではなく、よく勉強した上で正しい判断をしていきたいと思います。