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JIDAデザインミュージアムセレクションVol.12

デザインミュージアムセレクション選定副委員長 大縄 茂

 

~私的興味本意な雑感~

 

 

皆様に於かれては既にご存知と思うが、JIDAデザインミュージアムセレクション事業(以下JDMS)で発表・展覧会にお目見えする選定品は、まずJIDA会員や選定委員からの推薦を受けたものをHPで公表、次に選定委員によるネット上での可否意見交換・投票、その結果が出たところで幾度かの選定会議を行い仮選定品として対象企業へ案内、先方の本事業参加可否により最終セレクション品が決定される仕組みだ。今回選定された商品34点(30社)も同様の手順で決定された。選定委員会内で仮選定品となったものの企業側の不参加表明で残念ながら選定できずに終わったものもある。

このようにしてセレクション選定品となった中から、私的に興味深い製品を2点ご紹介したい。

 

燕三条地域の製品たちと「メタル丼」

今JDMS Vol.12では、この地域の製品が4点選定されている。過去には(株)諏訪田製作所つめ切りやサーモス(株)保温マグなどがある。ご承知のようにこの地域の特産品は、燕市は金属洋食器、また三条市は刃物や工具だ。最近ではノーベル賞晩

餐会で使用されるカトラリーや昨年11月横浜で開催されたAPEC昼食会でのワインカップ(真空チタンカップ)、またカーデザイナー奥山清行氏とのコラボレーション(鎚器銅器金属ビアジョッキ試作)等々、話題に事欠かない。

さて、JDMS Vol.12での対象製品だが、プリンス工業株式会社:男性用キッチン用品、株式会社カバサワ:剪定鋏、株式会社スノーピーク:焚火台、株式会社カンダ:メタル丼の4製品だ。中でも小生が愛してやまないのが「メタル丼」だ。これは一般的な陶器製ラーメンどんぶりをステンレスの絞り加工で中

空断熱二重構造に置き換えたものである。おそらく陶器製のそれと大きく違わない形状なのだろうが、ありがちな独特の絵柄の排除がその形状の美しさだけを素直に伝えている。また塗装仕上げのものは漆器を思わせる風合いを持ち、生地そのもの(ステンレス磨き)のものより一段と美しさを感じる。実用面では材料の熱伝導率の低さに加え中空断熱構造であることから、器表面に熱さが伝わりにくくスープは冷めにくい。また業務での使用では日常的な器の破損(主に縁欠け)による廃品減少というメリットがあるようだ。

ラーメンどんぶりのほか鉢と浅皿も追加され、「金属食器=銀食器」的価値とは違う、日本ならではの金属食器の新たな幕開けを感じさせる。

 

着脱式運転補助装置「SWORD」

従来、下肢障がいの方が一般の自動車を運転する場合、改造された専用車を使わざるをえず、車種選択や行動範囲に大きな制限があったが、今JDMS対象製品「着脱式運転補助装置SWORD」の出現によりこれらのハンディキャップは大幅に解消されることとなるはずだ。自家用車を家族とシェア、旅行先でレンンタカーを借りドライブ、勤務先の営業車を運転、カーシェアリング参加など、一般には当たり前のことだが、下肢障がい者であるが故に諦めていたライフスタイルが現実のものになるのだ。どうしても閉じこもりがちだった彼らの世界観すら変えてしまう大きなパワーを秘めた製品であり、経済性、利便性、更には障がい者の積極的社会参加にも繋がる潜在力を感じる。安全性と操作性については、数多くの原理試作や4年間の使用実施検証においても十二分に検討され満を持しての発売となった。デザイン性においては、ユニバーサルデザインにおける一般的な「優しさ」「暖かさ」とのキーワードはあまり感じられず、むしろ車内に馴染むシャープでクールなセンスでまとめられ、申し分ないクオリティーに仕上がっていると思える。

世界初の携帯型、車への改造一切不要、着脱時間慣れれば共に1分程度、国産車の8割に適合、レンタカー業界での利用拡大、事故時の保険金支払いハンディ無し、そして価格¥198,000。従来の補助具や専用車では考えられない仕様だ。

このようなものへの購入時の補助金制度を持つ自治体も多いが、本品への理解が進んでおらず、「助成金交付制度」の対象外製品と判断されるケースもあり悔しい思いをしているユーザーもいると聞いている。ここでも行政の大きな壁が阻んでいるのか? 「自立支援」との掛声だけが先行することなく、かけがえのない自由のため支えて欲しいと願うばかりだ。

自動車の動力システムがモーターになろうとも現状の運転方法が大きく変わることはない。自身の高齢化・被障害となることも考えると、是非早く普及してもらいたい製品の一つと感じる。

 

※JIDA会報誌HotLineNews Vol.86より抜粋

更新日:2018.02.11 (日) 10:37 - (JST)]